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「どうでもいいんだよ鴉なんて」
厳しい顔つきで白髪と黒髪の二人を見ていた少年がいきなり、怒鳴り声を上げ、白髪の子に掴みかかる。
「刀だよ刀!!今すぐ刀をよこせ!!鬼殺隊の刀!!色変わりの刀」
掴みかかれてもなお、白髪の子は気にも留めない様子で厳しい顔つきの少年を見つめている。
突然の出来事にひどく驚いた。どうすればいいのだろうか。
あの少年を止めないといけないことは頭では理解しているのだが、生憎それを止める術も勇気も持ち合わせていないのだ。
「この子から手を離せ!! 離さないなら折る!!」
「ああ? なんだテメェは やってみろよ!!」
耳飾りをつけた少年が止めに入り、彼の腕を掴んだ。
すごいなぁ、あの状況で動けるなんて勇敢で、正義感のある人だ。
ミシッと嫌な音が鳴った。
......本当に折るつもりなのか?あの少年は。
「ぐっ...」
厳しい顔つきの少年が白髪の子から離れた。
耳飾りを付けた少年が白髪の子を守るように立ち塞がる。
「お話は済みましたか?」
「では、あちらから刀を造る鋼を選んでくださいませ」
「鬼を滅殺し己の身を守る鋼の刀は御自身で選ぶのです」
ずらりと玉鋼が並んでいる。
一通り見ていると、とある玉鋼が目に入った。
他の玉鋼よりほんの少しだけ暗い色をしている。
私はその玉鋼を手に取った。
みんなそれぞれ玉鋼を選んだようで、次々と帰路に帰って行った。
私も帰らなくちゃ、あの家へ
七日ぶりに帰ってきた家は相変わらずとても静かだ。
まるでこの家だけ時が止まってしまったみたいだ。
「ただいま帰りました」
そんな静けさを吹き飛ばすように家中に響く声で言い放つ。
音がしない、それもそうだ。この家は私と父しかいない。
私の家族である兄と弟はこの家からいなくなってしまったのだから。
とりあえず居間に向かうことにしよう。
靴を脱ぎ、居間へ一歩踏み出したそのとき。
ドタドタとこの静かな家に似つわしくない騒音が響いた。
「A......」
名前を呼ばれ振り向いた。
肩で呼吸をし、きっちりと整えている髪はボサボサに崩れ、いつもの無表情が崩れ、ひどく焦った顔つきの父がそこにいた。
「お、お父さ」
ぎゅっと、包み込むように力強く抱きしめられた。
「よくやったな、A」
その言葉が聞こえた瞬間、私の目から涙が溢れ出した。
お父さんはゴツゴツとした大きな手で私の頭をいつまで撫でいた。
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作者名:名無し丸 | 作成日時:2021年10月12日 19時