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そこには。
きよちゃん、すみちゃん、なほちゃんによって引き伸ばされている伊之助くんとびしょびしょになっている善逸くんと、女の子と鬼ごっこをしている炭治郎くんの姿があった。

この光景を呆然と眺めていると善逸くんが顔を上げ話しかけてきた。

「あ! Aちゃんもここに来たんだね」

「う、うん」

「しのぶ様!」

アオイちゃんのしのぶさんを呼ぶ声を皮切りに、各々訓練していた手を一旦止め、私たちの周りに集まってきた。

「みなさん。訓練は順調にやっていますか?」

「はい!」

炭治郎くんが元気な声で返事をする。
炭治郎くんの元気な声を聞くと私も元気になるなぁ......

「今日からAAさんも訓練に参加しますので、皆さんよろしくお願いしますね、では私は任務があるのでここでお暇します」

しのぶさんはそう告げると訓練所から去っていった。


私はその場にいる全員の顔を見て挨拶をする。

「AAです。これからお世話になります。よろしくお願いします」

「Aさーん、訓練がんばりましょー!」

「Aさん。よろしくお願いします」

「......」

蝶の髪飾りをつけ、髪を一括りしている女の子がこちらをじっと見ている。
あれ? この子どこかで見たことあるような......

「彼女は栗花落カナヲ。俺たちと一緒に最終選別を受けたんだ。きっとAも見たことがある筈だと思うんだが」

炭治郎くんに言われて頭の中の引き出しを探る。
蝶の飾りの女の子。蝶。
あっ、思い出した。
あの、涼やかな顔で蝶と戯れていた女の子だ。

「あぁ! 思い出したよ」

私は栗花落さんの前まで移動し、彼女に声をかけ、手を差し出す。

「えっと、栗花落さん、よろしくお願いします」

「.......」

栗花落さんは相変わらずこちらをじっと見て、くるりと体を翻し、薬湯がいっぱい乗せてある、机のところまで行ってしまった。

栗花落さんが行ってしまい、そこには中途半端に手を差し出した私がそこに残された。

......? もしかして無視、されたのかな?
そうだよね、いきなり手を差し出して握手する人なんて、そうそう居ないよね、あわよくば友達になりたいと思ったけど図々しいよね。

炭治郎くんには「大丈夫だ。A、俺もカナヲと仲良くなりたいと思っているんだ。一緒に頑張ろうな!」
励まされ。

伊之助くんは私を憐れんだのか、黙って背中をポンと叩き。

善逸くんは私の差し出した手をぎゅっと握り、背中を摩った。

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作者名:名無し丸 | 作成日時:2021年10月12日 19時

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