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「こ.....は.....の?」
「ここはね、蟲柱の胡蝶しのぶさんの屋敷で蝶屋敷ってところだよ」
胡蝶しのぶさん。聞いたことがある。でもなぜ彼女の屋敷に私は今いるのだろうか。
そもそもなんで私と善逸くんが難なく会話できているのか不思議だ。
「それはね、俺の耳がいいからだよ」
びっくりした。声にも出していないのに先走って回答しないでいただきたい。
「あはは! Aちゃんびっくりしてるね。さっきも言ったけど俺は耳がいいからさ、何となく人の考えていることがわかるの、Aちゃんから不思議がっている音が聞こえたから答えたんだ」
「す.......ね」
「全然すごくないよ、寧ろ嫌なことばっかりだよ」
「ご.......」
「気にしなくていいよ。それよりAちゃんが目覚めてくれて本当によかったよ。だってAちゃん七日間も寝ていたから......」
「え......」
「失礼します」
先程の女の子とは別の人の声がし、しばらくするとこちらを覗きこむ女の人の姿がぼんやりと見える
「Aさん。やっとお目覚めになりましたね、身体の具合はどうですか?」
私はかろうじて動く首を左右に振り、身体が不調であることを彼女に訴える。
「なるほど、でもお薬を投与すればすぐに治りますよ。清子さんは全集中の呼吸・常中を使えてますからね」
「えっ!? そうなの?」
私はこくんと小さく頷いた。でもなんでこの人に私が全集中の呼吸、常中が使えると分かったのだろう。
「申し遅れました。私は蟲柱の胡蝶しのぶと言います」
その疑問はすぐに解け、納得した。柱ならば全集中の呼吸・常中は使えて当然で、他の人が使っているかどうか分かるだろう。
「Aさんは本当に危なかったんですよ。身体中に毒が回っていて、死ぬ手前だったんです」
「ほんとうに、Aちゃんが生きてくれてよかったよォ......」
善逸くんはべしょべしょに泣きながら、私の手をぎゅっと握った。
「Aさんは意識を失いながらも全集中の呼吸・常中でなんとか凌いでいたんですよ。ですから、善逸君もできるように訓練頑張って下さいね」
「は、はいぃぃぃ」
そうだったのか。あの父からの地獄の鍛錬によって私は全集中の呼吸・常中を習得した。
父からの教えによって私の命は救われたと言っても過言ではない。
ありがとう父さん。
父のことを思い出してほんの少しだけ寂しい気持ちになった。
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作者名:名無し丸 | 作成日時:2021年10月12日 19時