１話 ページ3
───この島には、三つの人間が存在する。人間と、人間から派生した獣人という種族。
獣人は動物の力を借りて、その能力を生活や仕事、護身に生かす。
そしてもうひとつが、ハンター。ハンターは人間が違法とされる武器を手にし、獣人を殺める。ハンターは獣人の敵とされていた。
ここ、島の街のひとつ、マリンフォレストは、その獣人とハンターの争いとなった舞台である。
___のどかで、暖かい日差しに照らされて、硝子の光や木漏れ日でキラキラと輝かく街並み。
現在のマリンフォレストは平和そのものを現しているのではないか。
そう思っているからこそ、彼女…？いや、彼の言っている事が信じられなかった。
「この街、もうすぐものすっごーく危険な事が起こる…気がするよっ！」
突然現れては、何の前触れもなくこの者はそう叫んだ。
男とも女とも見える中性的な丸みを帯びた顔立ちに、髪と同じように黒い艶がある瞳。
そして何より気になるのが肩から体が透けて消えている。それが風船のようにふわふわと空中に浮遊しているのだ。
困惑しながらも状況を整理しようと試みた。
「…うん、あの…まず貴方は誰？」
数分前、いつも通り獣人達はアジトでそれぞれ仕事を探したり食事をしたりそれぞれ自由に過ごしていた。
時刻は午前８時。
秒針が真上にきたときに、大きな音をたてて戸が開かれた。
中にいた獣人達は何事か、と戸の方を一斉に振り向くが、戸を開けたと思われる人物は見えない。
風の仕業か誰かの悪戯だろうか…？
怪しがりながらも扉から一番近くにいた蛇の獣人であるサクラが閉めようと戸に近づく。
ひゅっ、と外から大量の枯れ葉を運ぶ程の強い風が吹き抜けて思わず瞼を閉じた。
「ねぇ、ここ。獣人さんのアジトってやつ？」
ゆっくりと目を開けると、何もなかったサクラの前にこの幽霊のような少年が一瞬にして姿を現したのだ。
そして、現在に至る。
「…うん、あの…まず貴方は誰？」
サクラが少々訝しげに問うと、彼は楽しげに一回転し自分の名を告げる。
「おいらはシズクだ！」
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作者名：黒夏 | 作成日時：2018年3月30日 11時
