獣の海と雫の方舟 (ページ9)

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７話ページ9

食事班と呼ばれる獣人さんが芳しい匂いのする料理をテーブルに並べていく。アジトでの晩御飯は、外で食べる人、皆で食べる人、部屋に持っていく人、様々だった。
サクラ達を待っている間、俺はテーブルでゆっくりと紅茶を飲もうと席につく。

「…え？」

自分が座ろうとしていた椅子に、ちいさなヒョウが乗っていた。白いヒョウ…ユキヒョウ、だろうか。椅子の上で、凜とした青い目で見つめてくる。ここでは動物でも喋れるはずだが、ただ無言で、見つめてくるだけだ。

「…シュウ、こんなことろにいたのか。珍しいと思ったら…あれ、君…。」

近寄ってきたのは色素の薄い少年。ユキヒョウの事を探していたのか、少年はユキヒョウを見つけると安堵したように手を伸ばしその子を肩にのせる。そして俺に気付き、先程までのユキヒョウのように見つめ…いや、これは観察と言った方が正しいかもしれない。その少年はまじまじと俺を観察した。

「……？」

「…あ、あの…。」

「そうか、あぁ、君が例の…。」

暫くの間をあけ、話しかけると思い出したように顔を上げ、俺の事に気づく。引っ越してきた獣人なんて、そんなに珍しいものでもないと思うが彼は興味津々という表情をしていた。

「不思議なおばけの男の子か…。見たところ、全然普通だけど。」

いや、違った。きっとシズクと俺を間違えてるのだろう。