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黒尾side
研磨が帰り、風呂から上がったAが俺の部屋に来ていた。
流石に付き合ってる訳じゃないから客間で寝てもらうが｢まだ眠くない｣と湿り気のある髪で言う。
｢明日はぼっくん達の試合とえーた君の学校も応援したい。｣
日中にAが話をしていたのは牛島若利が居る宮城の名門校白鳥沢の友達。瀬見君。
すげー仲良さそうでAの事を友達としてみている奴。
A自身もマブダチだと紹介していたっけ。
マブダチでも気軽に会える距離に居るのは羨ましい。
こっちは欲しくて仕方ねぇのに気軽に会えないだけで断られ続けている。
触れた髪を指先に絡めると、振り返るからそのまま後ろから抱きしめると｢なぁに？｣なんて警戒心の無い声が返ってくる。
｢お前が東京の奴なら良かった…｣
｢私宮城好きだからそれは無いかなぁ。｣
｢…なぁ、流石に一人でノコノコ東京まで来て男の家に泊まって、期待してもいーんですか？｣
体勢を変え押し倒すと広がる癖のある髪と、練習試合でよく見る弟くんがする挑発的な目。
さっきメールで[泊まりとは言え手は出さないでよ！]なんて過保護な弟からメッセージが届いていたな…
｢…期待しても、キスしか許可出来ないかなぁ。
残念ながらAさん処女なんで初めての行為はまだ踏み切れないの。｣
｢…は？うそだろ？｣
｢うそじゃないですぅ。｣
押し倒したまま見下ろす顔は嘘をついてるような感じはしない。
男がすぐに変わって無駄にモテるAが誰とも経験ねぇって…
｢なぁ、マジで俺と付き合わね？大事にする。｣
｢押し倒したまま告白とか初めてされた。
大事にするって言って頷いたらすぐ手を出して来そうだけど？｣
｢否めないですね。｣
ふふっと笑ってすり抜けるから、彼氏枠にはまた入る事は出来なかった。
｢てっちゃんが優しくて良かった。
強引な人ならこの時点で私は全裸にされてたね。｣
優しくなんて無い。このまま抱いちまっても良かったんだ。
軽いと思っていたコイツの初めて貰って少しでも意識させたい。
優しさって言葉が真綿で首を締めに来るようだ。
嫌われたくないんだよ、結局は。
人の気も知らないで頬に触れるだけのキスをしてAは部屋を出て行く。
｢ほんとずりー女…｣
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作者名：モカ
| 作成日時：2023年9月6日 22時
