プラスまで歩きましょう。（短編集）【nino】 (ページ31)

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【お正月番外編】ページ31

☆

風呂から出てリビングを覗けば
Aの姿はなくて部屋を見てもいない
もしかしなくてもまだ引きこもってんのか

「まーだ怒ってんの？」

ぺらりとこたつをめくると
丸まってぐっすり眠っている猫の姿

「……血を感じるわー…」

怒ったかと思えば中で寝落ちとか

大野家みんなこんななの？
目を離すと寝る家系なわけ？

「おいバカ猫、そんなとこで寝たら干上がっちゃうよ」

「…ん、ん…？」

「風呂入っといで」

「うん…」

起きたての寝ぼけ具合もそっくり

のっそりと出てくるとペタペタと
足音を鳴らしながら風呂場に消えた

俺はテーブルのコーヒーを片付けて
ゲームの準備をしていると
覚醒したらしい猫が戻ってきた

「おかえりー、似合うじゃないの」

こないだの誕生日にあげた
モコモコパジャマ３号
(ちなみに今回も水玉模様でお揃い済み)

「ゲームする？」
「する、アイス持ってくる」

何事もなかったかのように
隣にぴったりくっついてくる

家族ってさっきまで怒ってたくせに
なんかすぐ元に戻ったりしない？
そんな関係なんだなぁ俺たちと
頭の片隅で認識している

お互い分かりきったステージで
無言でコントローラーを動かしていると
ぽつりとAが呟く

「お正月なのにゲームってどうなのかな(笑)」

「出掛けたかった？」

「ううん、そういう事じゃないけど」

「いいんじゃない？当たり前にこうやって一緒に過ごしてさ、俺ららしいじゃん」

「……そうだね」

只でさえぴったりくっついてんのに
珍しく頭を肩に乗せてきたのには驚いた

「…どしたのよ、可愛い事しちゃって」

「お正月だからいいかなって」

「あのね、お正月じゃなくてもくっつきたかったらくっついていいから。俺もAとくっついてたいし」

相変わらず遠慮がちなところも
付き合ってから未だに変わっていない

そんな初々しさも感じつつ
これからもそうであってほしいと
いつもの日常でお正月を過ごした。