5.死の溜まり ページ6
村は
「っ…」
「な……」
青楽は目を見開いた
家が、人が、破壊されつくしていた
このあいだまで笑ったり、泣いたりしていた
見慣れた村人たちの残骸
陽が眩しい暑い日だ
濃密な肉体の腐敗臭が身体中を満たした
震えが止まらない
誰か、生きてる者はいないか
村の中へ進んでいく
旅人も黙ってそれに続く
誰か
誰か
誰か
誰か
「!」
ある家にたどり着いた
赤子を預けた女の家
青楽は血の気がひいた
足がふらつく
扉に手をかけた
家の中は他のところとかわりなく、
荒らされ、血の溜まりができていた
女性が倒れている
青楽はその硬く冷たい体を起こした
眉間に穴が空いている血は既に乾いていた
「ひどい…」
旅人が呟いた 声が震えている
「…赤ん坊は?」
青楽が顔をあげた
この家にはどこにもいない
さっき見てきたところにも
子供は"いた"のに
女性の赤ん坊も、預けた赤ん坊も
「…さらわれた?」
それしかない
まさかそれが理由なのか
そのためだけに
「おい」
旅人に声をかける
「なにを知っているんだ」
少しためらったあとに口をひらいた
「この村で、新しい"マギ"が産まれたんだ」
マギ?
聞き覚えのある言葉だ
たしかテンもいつか会ったことがあるとか
魔法に秀でて、誰よりもルフに愛された存在
しかし
「どうやってそのことをかぎつけたんだ
殺人者どもも、お前も」
強く睨みつける
もしかしたらそいつらと仲間かもしれない
男は悲しげに青楽を見つめる
「そういえば名前を言っていなかったね
僕はユナン、…マギなんだ」
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作者名:青海月 | 作成日時:2017年8月12日 13時