少女と記憶 (ページ44)

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第43話ページ44

奏SIDE

頭を抱えて伏せていた状態から立ちあがり、こちらに飛行魔法でやってきた唯火を睨みつける

「ちょっと！
　あんなすさまじい破壊力を持つ魔法使うなら早く言いってよ！
　それにそんな魔法があるならソレを使いな…」

何も言わなず私の方へふらふらと近づく唯火を見て
私は様子がおかしい事に気づいた
そのとき、唯火が突然バタッと倒れた

驚いて、倒れた唯火に駆け寄る

「唯火っ大丈夫！？
　って、その様子じゃ大丈夫じゃないみたいだね…」

唯火がもともと白い肌をもっと青白くさせて私を見る

「ご、ごめん…
　この魔法、は、魔力、消耗が、激し、くて…
　使うと、いつも、こうなる、の…
　だから、敵の前、では、使え、なかった…」

息絶え絶えに言う唯火にむしろ私はいら立って、ついこう言ってしまった

「じゃぁ、何で今使ったの！！！」
「私、赤髪、赤眼、の時は、破壊系、の魔法、が、こういう、激しい、もの、しか
　使え、なくて…」

唯火の説明を聞いて、この状況で納得してしまった

銀狼の召喚をやったのには自分がまともに戦えないからだったんだ…

妙な納得をしていた私の耳に

――――――ピッ

という小さな亀裂が入るような音が聞こえた

小さくても明瞭なその音に私は目線を唯火から音が聞こえた方へと向けた
すなわち、空へと

特に変化がないように見られた空

しかし…

ピキィィィィッ

先ほどとは比べものにはならないほどの音が響きわたると同時に空に亀裂が入る

「！」
「この、世界、が、壊れる、音…」

パァァァァァンッ

唯火のつぶやく声は世界の崩壊する音にかき消された

ガラスよりも透明な世界のカケラが雨のように降ってくる

光に反射し輝くカケラは、何かに当たる度に消滅する

「…」

その幻想的な光景に思わず見とれてしまう

そして、世界の崩壊が終わると、消えていた音がよみがえってきた

人工的な音
あるいは人間自身が出す音

さっきまでいた世界に、いなかった人間の出す音だった

その音を聞いて安堵する

…帰ってきたんだ、元の世界に…

感慨にふけっている私の肩をたたく人がいた

「ねぇ、あなたまさか… 霧無奏？」

美しいその声は聞いたことのない声だ

誰だろうと振り返ると、そこには驚いた顔をした女性がいた

「えっと、確かにそうですが…あなたは？」

私の答えに絶句したように固まった女性は気を取り直すように咳払いをするとこう名乗った

「私はミヨ、あなたの味方よ」