少女と記憶

第25話 ページ26

私はたどりついた考えをすぐさま自分で否定する

そんなはずはない
というかできるのか?
いや、そもそも、手っ取り早いのは自ら奏のところに行くことだ

こんな不確実で効率の悪いことをする必要なんかない

でも…
それを言ったら私を殺すために鏡面世界を構築することだって効率が悪い

「あー、もうっ わかんない!」

戦いのさなかだというのに、頭を抱える

すると、声がした

「敵のつくりだした世界で悩みごとですか?」

あの紫の男の声ではない

女の声だ

声のほうへと私は振り向く

そこには肩までのふんわりとした緑色の髪と薄い黄緑色の瞳の女
紫の男と同じように黒のローブをまとっている

「あなたは?」

私が聞くと緑色の女は穏やかに微笑み答えた

「わたくしは「Ｋ」
　この鏡面世界の術者です」
「「Ｋ」ですって…
　あの、"空間の使い手"と呼ばれる?」

驚きながら私は問う

「えぇ」

ウソでしょう…

【知恵の実】の中では最も手に負える、良く言えば最強の魔法使い
全ての魔法使いの中で言ってもこれほど空間を使うのに秀でた者は少ない
そう言われる"空間の使い手"

名の通り空間を使う
と、言うか空間を用いた魔法しか使わない

例えばこの鏡面世界もそうだ

なるほど、どうりで罠が多いと思った

あの男も強いがこの女もただ者ではない

しかしそうなると、ますます先ほど考えたことの可能性が高くなってくる

私の考えは顔にもでていたようで女はクスッと笑った

「わたくしがあなたをたおしに来たのが不思議なようですね
　後ほど、きっちり説明しますから
　とりあえず、あの人が来たようですよ」

そういうと緑色の"空間の使い手"は空気に溶け込むように消えて行った

「敵と会話とは、ずいぶんと余裕だな」
「あー、追いついちゃったかぁ…」

しぶしぶという感じで私は振り返る

やはりと言うべきか、そこには紫の男がいた

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