一髪 ページ22
辛うじて柄で受け止めるも、ビリビリとした刺激が手に伝わってくる。
歴戦、極、古株。小手先だけでは埋められない差が目の前でまざまざと見せつけられたような気がした。
『……なんのこれしき！！』
自らを鼓舞するための声を張り上げ、再び構え直して同田貫正国を狙う。ところがここは雑木林。長い本体が邪魔をして、構えるために気に当たらないようにと配慮した結果の軌道修正が次の動きの遅れにつながった。
「チェスト！！」
隙をつかれ、腹を狙われる。これが実践なら内蔵を切られてやられている軌道だ。
後ろに数歩飛び避けようとするが、また立地が邪魔をする。木の根や石のある場所では思う通りの立ち回りはしづらい。結果、服に軽く剣先が当たる。
服程度なら無傷。しかし危なかったのも事実だ。
次こそは貫く。そう強く強く思い、低く構えて突進する形の攻撃をする。
いなし、いなされ、攻撃し、攻撃され。
そんな風にしばらく続いた手合わせで、先に音を上げたのは黒丸国光だった。
荒く肩で息をして、膝から崩れ落ちる。その瞬間も、槍先は同田貫正国の心臓に向いていた。
『っえっほ、げほっ』
「おー、大丈夫か？」
地面とお友達状態の黒丸国光に、同田貫正国は声をかけた。ジリジリと脳を焼くような熱がまだある黒丸国光は、自分でも無意識のうちに問いかけていた。
『私め、まだ戦神として、未熟にございます。まだ実戦刀のあなたがたには、煙たい存在やもしれません。でも、でもいつか、仲間と認めていただけはしませんか』
同田貫正国は黄色い目をぱちぱちとさせた。仲間かどうかなんて聞く必要も無いほど戦を好きでいる彼が、そんなことを問い掛けるなんて。幻だから、美術品だからって疎ましく思うことなどありはしないのに。
土ぼこりに汚れた白い肌を、そっと拭う。持ってきていた水で頭を冷やしてやりながら告げる。
「もう元々仲間だろーが。同じ本丸で同じ敵と戦って、同じ飯食って同じ風呂に入って。これで仲間じゃねぇんならこの世界のどこにも仲間なんざいねぇよ。」
くだらないことでウジウジ悩んでたんだなぁと付け足せば、黒丸国光は安心したように笑った。
そのまま手合わせを続ける体力は双方共にない。二人風呂に入り、夕餉の時刻まで寝こけるのであった。
最後まで急所を諦めずに狙いに来ていたこの槍はやはり見込みがある。
こういった育てがいのある後輩に、同田貫正国はひとしれずテンションが上がった。
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にこ - 夢小説で夢見るなは無理がありますからね、私はこの小説好きですよ。 (2022年6月13日 11時) (
レス) @page24 id: acf88399c4 (このIDを非表示/違反報告)
ふきお - 何ですかこれ、控えめに言って最高です！続きが浮かびましたら是非読ませてください！！ (2020年6月3日 2時) (レス) id: 34bb43a2e9 (このIDを非表示/違反報告)
狐妖(プロフ) - 今のままでも良いと思いますよ、自分も愛され小説は好きです。読者の意見も勿論大切ですが、夢小説なんですから見たい夢を思いのまま書いてよろしいのではないかと…！長文失礼しました、これからの更新楽しみにしてます！ (2018年12月19日 14時) (レス) id: 8110ce8b8f (このIDを非表示/違反報告)
黒ノ酢(プロフ) - ケロ丸さん» 愛されにしようと思ったらつい誉め言葉が多くなってしまいました。申し訳ありません。ぎくしゃくする描写は、後にいくつか作る予定ですのでご容赦ください。 (2018年10月5日 22時) (レス) id: ec0b05428c (このIDを非表示/違反報告)
ケロ丸 - 黒丸が美しい美しいってそればかりだなーって印象あります。讃えるばかりで、ギクシャクした感じが長谷部くらいしかなかったので、ちょっと夢見すぎだと思います。 (2018年10月3日 19時) (レス) id: 2c86a77dc3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒ノ酢 | 作成日時：2018年9月3日 11時
