思いは同じ ページ43
すっかり静まり返ってしまった浴場。居心地の悪さを感じて、長谷部はせめて一言だけでも謝ろうと思い、黒丸に近づく。
その時である。
『え?』
よりによって、今目が覚めた黒丸。
そこでようやく彼の目は長谷部を捕らえた。
「・・・その、すまなかったな。」
ぶっきらぼうに言う長谷部に、黒丸は覚束ない口調で返す。
『仕方のない事です。あのように優しい主様の傍に、私めのような存在があることこそが不条理。』
それは、と誰かが黒丸の言葉を咎めようとしたことを、さらに強い口調で黒丸が遮る。いつもの弱々しい様子はない。
『ですが、私めが主様のために働いていることは、忘れないでいただきたいのです。』
その目は長谷部の双眸を捕らえていた。
力強い意志を奥底に秘めていた。
『そして長谷部様。』
名を呼ばれ、長谷部はほんの少しだけ目を見開く。
黒丸は両手を胸にあてた。
『私めも、決して忘れることはございません。あなたは忠義の刀。主様のために在り、主様のために手を尽くしているということを。』
「黒丸・・・。」
黒丸は、長谷部の頭に優しく手を置いた。
そして頬に指を滑らせ、むにっと口の端を引っ張り上げる。
『主様のために在りたいという思いは同じです。志すところは同じ場所です。ですから、私めのことでそのような顔をなさらないでください。』
今度は両手で長谷部の口の端を引っ張る。
『主様の前では、不敵に笑っているあなたこそふさわしい。』
「・・・わかっている。」
童のように扱われ、つい声が尖る長谷部。くすくすと笑う黒丸は、長谷部の頬から手を放して浴場から出て行った。
まだ足元がふらついているのを見て御手杵と蜻蛉切がそれに続く。
長谷部と燭台切と鶴丸、大包平と日本号がその場に残った。
数分沈黙が続くが、それを破ったのは大包平だった。
「俺はまだ許したわけではない。」
吐き捨てて、出ていく。
やれやれと顔を見合わせて、鶴丸と日本号も出て行った。一言去り際に残して。
「ま、そんな難しい顔するもんじゃないさ。いずれ分かる。」
「お前は変なところで気負うからなぁ。それがどうって訳じゃねぇが。」
残った燭台切は何も言わなかった。
黒丸のことをどう思うかは長谷部の自由であり、自分が変えられるものでもないからだ。
少し時間が経ち、どちらからともなく立ち上がって、終始無言で浴場から出て行った。
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腐らせた方がいいですか?その場合の相手はどうしますか?意見をお願いします。
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黒ノ酢(プロフ) - Qたんさん» 勘違いが好きなんです(o´罒`o) (2018年12月19日 9時) (レス) id: 3f437a82fa (このIDを非表示/違反報告)
Qたん - すごい勘違いですね・・・・・・・・・・・・ (2018年11月17日 0時) (レス) id: 1e4cd3bd39 (このIDを非表示/違反報告)
とむら(プロフ) - 黒ノ酢さん» はい、大丈夫ですよ。寧ろ意見を聞いて下さり嬉しいです。楽しみに更新を待ってますね (2018年8月22日 3時) (レス) id: fe1253ce58 (このIDを非表示/違反報告)
黒ノ酢(プロフ) - とむらさん» 愛されの方向で固めたいと思います!他の方の意見次第では、少し特定の男士によるかもしれませんがよろしいですか?それから、勘違いはまだまだ続く予定です。ご意見ありがとうございます! (2018年8月21日 4時) (レス) id: ec0b05428c (このIDを非表示/違反報告)
黒ノ酢(プロフ) - 152339さん» ごめんなさい!考えている大まかな展開ではまだまだ勘違いが加速していくのです。御気に障ったのであれば申し訳ありません。愛されがいいという方もいるので一概には言えませんが、気持ち鶴丸寄りになると思います。ご意見ありがとうございます! (2018年8月21日 4時) (レス) id: ec0b05428c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒ノ酢 | 作成日時:2018年6月21日 17時