六道の道の巷に待てよ君 ページ13
主はずんずんと進む。
「遠い未来、付喪神は戦争に起用されているらしい。」
『付喪神が戦争に?』
「ああ。閻魔から聞いた話だ、間違いはあるまい。」
なんでも、時をさかのぼって歴史を変えようとする輩がいるらしい。
そのせいで死ぬはずの人間や生まれるはずだった人間の魂の数がおかしくなって、冥界では大変なことになっているのだとか。
それに対抗すべく、人間は付喪神の協力を得て戦争をしているらしい。
「お前が槍の付喪神だからこその特例だ。その世界に、体をもって顕現することができる。」
『人間に力を貸すため、ですか?』
「ああ。お前は本体である槍を自分で持てるし、移動だってできる。そういった意味では、自由になれるんだ。」
人間にそれなりの力を貸し、その代償として人としての生を得る。
確かに、動くこともできなかったあのころと比べればそれは自由だ。
「お前の主は皆、お前の自由を望んでいる。お前の幸せを望んでいるんだ。」
『生まれ変わったとて、幸せになれるでしょうか?籠から放たれた鳥のように、迷うこともあり得ましょう?』
「それもまた自由故の悩みだ。わしにいわせりゃ、戦争なんぞ二の次だ。お前は生きることを、自由を楽しんで来い。黒丸。」
やがて、古めかしい扉の前につく。
ひんやりとした空気を生み出すそれは、まさしく戦場への扉に思えた。
「いずれまた会える。お前はゆっくり、ゆっくりと来いよ。」
『お別れ、ですか?』
「今のところはな。」
主は、扉を開けた。
まるで吸い込まれるかのように空気が流れる。黒丸はつい、主の服を握りしめた。
「不安に思うことはない。お前と同じような存在がごろごろいるんだ。きっとお前も、気に入るやつが出てくるさ。」
『主様・・・。』
いってこい
そう言って、主は黒丸を扉の向こうへと放り出した。
落ちるような感覚、遠ざかっていく主の顔。
黒丸が見たその表情は、まるで泣き出しそうなほど悲壮に見えた。
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黒丸国光は知らない。歴代の主が生まれ変わることはもうないと。
黒丸国光は知らない。冥界でさえ歴代の主に会えることは二度とないと。
黒丸国光は知らない。歴代の主の魂そのものが、黒丸国光の神気を成していると。
転生の権利を捨て、黒丸国光の神気となることで主達は永久に黒丸のそばにいることを選んだ。
一番最初の主の魂ももうすぐ、黒丸の神気となる。
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黒ノ酢(プロフ) - Qたんさん» 勘違いが好きなんです(o´罒`o) (2018年12月19日 9時) (レス) id: 3f437a82fa (このIDを非表示/違反報告)
Qたん - すごい勘違いですね・・・・・・・・・・・・ (2018年11月17日 0時) (レス) id: 1e4cd3bd39 (このIDを非表示/違反報告)
とむら(プロフ) - 黒ノ酢さん» はい、大丈夫ですよ。寧ろ意見を聞いて下さり嬉しいです。楽しみに更新を待ってますね (2018年8月22日 3時) (レス) id: fe1253ce58 (このIDを非表示/違反報告)
黒ノ酢(プロフ) - とむらさん» 愛されの方向で固めたいと思います!他の方の意見次第では、少し特定の男士によるかもしれませんがよろしいですか?それから、勘違いはまだまだ続く予定です。ご意見ありがとうございます! (2018年8月21日 4時) (レス) id: ec0b05428c (このIDを非表示/違反報告)
黒ノ酢(プロフ) - 152339さん» ごめんなさい!考えている大まかな展開ではまだまだ勘違いが加速していくのです。御気に障ったのであれば申し訳ありません。愛されがいいという方もいるので一概には言えませんが、気持ち鶴丸寄りになると思います。ご意見ありがとうございます! (2018年8月21日 4時) (レス) id: ec0b05428c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒ノ酢 | 作成日時:2018年6月21日 17時