すれ違う思い ページ7
反抗する私が気に食わないのか、歯を食いしばり口を開いた
｢生きてるわけないだろ！！｣
ビクッと体を震わせる
｢考えれば分かるだろ…あの映像は六年前のもの…
そして、四年前に見つけられた血塗れのトレーナーカード……生きてる保証なんて………｣
｢勝手に決めつけないでよ！！｣
今度は、私がコウキの頬を殴った
｢私は自分の目でお兄ちゃんの死体を見ていない…
無関係なコウキ達に、お兄ちゃんが死んだなんて言われる筋合いはない！！｣
｢｢ーーーっ！！｣｣
完全にキレたコウキが、殴りかかろうとしてきた
｢もうやめて！！｣
ヒカリの悲痛の叫びで、コウキの動きは止まった
｢帰ろ…Aが危険を冒すことなんてないんだよ……｣
震えるヒカリの目は、首にかけられたルビーのネックレスのように真っ赤になっていた
涙はヒカリに似合わないしヒカリの涙は見たくない
ホロホロと零れ落ちる涙を目にしても、意思を変えるつもりはない
｢……嫌だ｣
｢ーーーっお前なぁ！！｣
また殴られると覚悟した時、背後から嫌な気配を感じた
振り返ると、そこには黒い闇が広がっていた
｢なに…これ……｣
ヒカリは初めて見たのだろう、驚きで開いた口が塞がらない様子だった
兄を呑み込んだものと同じだ
ここに入れば…
｢A！！｣
進もうとする腕を、コウキに強く掴まれる
｢離してよ！｣
｢離さない…約束しただろ……
何があっても、お前の手は離さないって…｣
顔を歪めるコウキは、今にも泣き出してしまいそうな子供そのものだった
それは、昨日の約束であって今は違う……
｢もう、私との約束なんて忘れてよ｣
｢！！｣
力が緩んだ隙に手を振りほどき、闇の中に入る
｢Aッ！！！｣
苦しそうに私の名前を呼ぶコウキとヒカリの方を見る
ばいばい、と口の形を動かして目の前に広がる闇の奥へと進んだ
ーーーーー
どれだけ歩いただろう
音も温度も感じない不思議な暗闇の中では、距離感も鈍ってしまう
ただの暗闇なのかと諦めかけていると、一つの光が見えた
あそこに行けば、きっと………
光に向かって走り出した
あと十メートル……
ごめんね、コウキ…ヒカリ……
あと五メートル……
待っててね、お兄ちゃん……
｢……嘘｣
光の先にたどり着くと、そこは全く知らない街のど真ん中だった
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作者名：猫ピース | 作成日時：2020年4月13日 18時
