■たった一人の家族 ページ10
『あるんだ。誰襲ったの?民間人?鬼殺隊?
それとも_______炭治郎?』
分かりやすいようにぴくりと反応した。
嗚呼、やっぱり。炭治郎だ。
『人を襲えば、それはもう鬼。
喰わずとも襲って殺せば同罪。どいてよ、炭治郎』
「っ嫌だ!禰豆子は殺させない!!」
キッと睨む炭治郎。
そして、その傍に駆け寄る善逸と伊之助。
…………この二人は知ってたわけね。
『三人とも隊律違反としてお館様に報告する。その鬼の頚を刎ねた後』
「やめてくれ!Aっ!」
『やめない。君達が可笑しいんだよ。鬼を庇うなんて気が知れない』
「俺の子分に手ェ出すんじゃねぇ!喧嘩は俺がする!!」
「お前黙ってろ!!話がごちゃごちゃになる!」
うるさい二人を置いて、僕は炭治郎の後ろに回り込んだ。
所詮は癸。甲である僕にも敵わない。
炭治郎の首に手刀で気絶させようとした。
「むゔ──!」
『っ!!』
鬼に蹴られ、重心が後ろに傾く。
蹴られた場所が確か、ヒビが入った肋だった気がするけど、まぁ良い。
何とか体制を整える。
“禰豆子”と呼ばれた鬼は僕を睨んで、三人の前に立った。
『……何?やるの?』
「ゔぅ…」
鞘から日輪刀を抜き、鬼に向ける。
鬼も小さかった体を徐々に大きくしていく。
「禰豆子駄目だ!!」
「むゔ…」
「Aは良い人だ!お願いだから、小さくなってくれ!」
炭治郎の言葉を理解したのか、鬼は体をシュウ、と小さくさせる。
僕はもう一度、刀を鬼に振りかざす。
「やめ──」
『桃李』
鎹鴉の名を呼べば「カァァァ!!」と鳴きながら炭治郎に襲いかかり、彼の前を塞いだ。
善逸や伊之助が僕を止めようとするも、もう遅い。
『さよなら』
無抵抗な鬼の頚目掛けて刀を横に振るった。
「やめてくれぇぇぇぇぇ!!!」
瞬間、炭治郎の声が響き渡った。
僕はその大きな声に驚いて、頚スレスレのところで刃を止める。
そちらに視線を寄越せば、炭治郎が涙を流していた。
「頼む、頼むから…禰豆子だけは、俺の…たった一人の家族、なんだ……家族を…これ以上、奪わないでくれ……誰も、失いたくない…」
『っ、』
一瞬、ほんの一瞬だけ炭治郎としのぶが重なった。
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黒豆粉 - 続編おめでとうございます!とっても面白いです!更新楽しみに待ってます!応援しています。頑張ってください! (2020年3月13日 23時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん - 夢主君ってどんな音とか匂いがするんだろ…気になる… (2020年2月22日 15時) (レス) id: dac3466e7c (このIDを非表示/違反報告)
レンゲ - わーい!続編だー!! (2020年1月1日 9時) (レス) id: 705f08a40d (このIDを非表示/違反報告)
華音(プロフ) - モカさん» ありがとうございます!! (2019年12月30日 13時) (レス) id: a6ec0cb896 (このIDを非表示/違反報告)
モカ - 続編おめでとうございます!! (2019年12月29日 18時) (レス) id: b98e8ac430 (このIDを非表示/違反報告)
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