157話 ページ11
僕が持っていた小瓶は4つ。
面白そうな薬草や錬金術に使えそうな材料があれば持ち帰ろうと持ってきた物だ。
なぜ僕が小瓶を持っていることをジェイドが知っているのかは知らないが、それよりも水を汲む際に落ちてしまわないかが怖くてヒヤヒヤしていた。
｢大丈夫？なんともない？｣
｢問題ありません。Aは心配しすぎですよ。｣
手渡した小瓶の内2つに水を汲んだジェイド。
残り2つの空瓶は返してもらった。
瓶の中に入った水は光を反射して輝いて見える。まるで魅了の魔法がかかっているかのようだ。
｢さて、これ以上山にいては帰りは真っ暗になってしまいますね。帰りましょうか。｣
｢帰るって、道分からないんだけど。｣
｢先程の魔法を使っては？なんとなくでもここに来られたんですから、コンパス替わりにはなりますよ。｣
にこやかに言うジェイド。
僕をコンパス替わりに使うつもりかよ。いいけどさ。マジカルペンはまだ全然濁ってないし。
｢別にいいけどさぁ。どうせならやっぱ一瞬で行き来できる魔法とか無いのかな。｣
｢おや、Aはものを取寄せる魔法は使えるのに送ることは出来ないんですね。｣
｢嫌味なの？出来ないんだなぁそれが。取り寄せるにしても大きいものは無理だし生き物なんてもっと無理。勉強不足かな。｣
｢なるほど。一方通行という訳ですか。｣
僕の魔法は不便なものが多い。色々使えるが極めたものが無いからだ。
転移系の空間魔法極めてみようかな…。
魔法薬学室のドアをノックする。
今の時間なら部活があったとしても終わっているだろう。
｢クルーウェル先生、いらっしゃいますか？｣
｢ジェイド・リーチにA・ウェラブルか。俺になにか用か？｣
ドアを開けた先生は僕達を見て訝しげに聞いてきた。まるで面倒事を持ってこられたと言いたげな態度に苦笑する。
あながち間違ってはいないのだから。
｢えぇ、少し。先程部活で山に行っていたのですが、Aが気になるものを見つけまして。｣
ジェイドが小瓶を先生に手渡す。先生は受け取った小瓶を見て眉をひそめて僕を見た。
｢おい子犬、これを山のどこで見つけた？勝手に飲んだりしていないだろうな？｣
飲んでないかって、本当に犬じゃないんだから。
犬扱いさえなければいい先生なのに。
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作者名：黒梦 | 作成日時：2020年11月1日 18時
