54話 ページ6
寮に帰るとアズールが慌てた様子で寄ってくる。フロイドはジェイドの近くへ行ってしまった。
｢A！大丈夫なんですか？何かありましたか？？｣
｢何が？なんにもないよ。なんで？｣
彼は何をそんなに焦っているのだろうか？
自分がなにかしてしまったか？でもアズールと会ったのは昼食中だ。その後は会っていない。
｢左胸に、違和感があったんです。
僕はあなたが何か、僕達を疑うような事があったんじゃないかと不安で……。｣
あぁ、そういえば眠る前は家族の事で寂しくなり、置いていかれる日が来るのではないかと考えてしまった。
その時に自分も左胸がチクリとしたような気がする。
あれは呪いの痛みか。僕が疑ったりするから。
僕の呪いが繋がったアズールにまで届いたらしい。
不安そうに揺れる瞳と目が合う。
｢ごめんね、マジカメ見てたらちょっと家族の事を思い出して。寂しくなっちゃってさ……。
自分も、愛してくれる家族が欲しかったなぁ、って。｣
アズールは何も言わない。無言で続きを促してくれているようだ。
｢3人はさ、いつかは僕から離れていく日が来るんだろうなって思ったの。
大切な友達だと思ってるよ。でも、家族って憧れるなって。｣
｢僕達だけじゃ、ダメなんですか？
僕じゃ、Aの寂しさを埋めてあげることはできないんですか？｣
まさかそんなことを言われるとは思わなかった。
｢Aは欲張りさんですね。｣
いつの間にかそばにいて話を聞いていたジェイドが話しかけてくる。
｢オレらがAの家族でいーじゃん。
一緒に寝て、一緒にご飯食べてんだから変わんないっしょ。｣
僕の頭に腕を置き、そのまま体重を乗せてくるフロイド。
家族か。フロイドが言うように今の僕達は同じ部屋で生活して、一緒にご飯を食べて笑いあって生きている。
血なんか繋がってなくていい。気にしなくていい。そんなふうに言われている気がした。
｢ごめんね、ただの気の迷いだよ。
僕は3人がいてくれればそれでいい。
3人が大好きだよ。｣
そう言って笑う。
｢でも、友達と家族が一緒って変じゃない？｣
細かいことは気にするな、お前が望むなら友達にも家族にもなってやる。
その言葉が嬉しかった。
3人は優しい。僕の欲しいものをなんでもくれる。
僕は3人にどんな対価を払えばいいのだろう？
とりあえず、今は3人の望むものを手に入れる事がせめてもの対価になるかな。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
幸せの対価。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 139人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒梦 | 作成日時：2020年10月7日 0時
