68話 ページ20
アズールが呼んできたのは保健室の先生、ではなくクルーウェル先生。
なんで変なもの連れてきたの。
僕はこの先生が苦手だったりする。
挨拶をしようと左手を上げた途端に怒られた。
｢BadBoy!腫れているのだろう。無理に動かすな。｣
｢はは、先生厳しいから苦手なんだよなぁ……。｣
｢なんだ仔犬。よほど俺に躾られたいようだな。｣
｢ゴメンナサイ。｣
横目でアズールを睨む。
目をそらされた。
フロイドがケラケラ笑っている。
散々な日だな。
湿布が貼られただけの左手は色が変わっていて少し動かすだけで痛い。
利き手なのに。これでは魔法どころか勉強ができない。
無言でクルーウェル先生に手当をされる。
喧嘩でもしたのかと聞かれたが模擬戦だと答え、やりすぎだと怒られる。
先生の手がお腹の痣に触れる。
｢いぁぅっ！｣
激痛だ。これ骨いってんじゃねーの。
｢派手にやったな。数日は絶対安静だ。｣
手際よく診察され、最後に左手の湿布を勢いよく剥がされる。
｢仔犬は左利きだったな？｣
そうだと答えれば魔法薬を塗りこまれ、包帯を巻かれる。
正直、触られるだけで痛く顔を顰めてしまったが、大人しく手当されていた。逆らったら何されるか分からない。
というより、手当してもらっているし相手は先生だ。大人しくしておく方が得策だろう。
｢Good Boy！もういいぞ。｣
｢ありがとうございました。｣
にこりと笑ってお礼を言う。先生は痛みが引くまで飲むようにと魔法薬を渡し、そのまま出ていった。
苦手だがいい先生ではあると思う。
｢大丈夫ですか？｣
黙って見ていたアズールが声をかけてくる。
｢大丈夫だけどさぁ。なんでクルーウェル先生だったのかなぁ……？｣
保健の先生が見当たらなかったのと、魔法薬の先生なので仕方がなかったと言うアズール。
別に責めている訳ではない。少し不満だったが。
包帯が巻かれた左手。当分は右手を使うことになるんだろうなぁ。
｢利き手を負傷してしまいましたので、当分は僕達がAの身の回りのお手伝いをさせて頂きますね。｣
｢いいねぇ。ジェイドぉ〜。オレもやる〜！｣
この2人に介護される事になるとは。
まぁ、何とかなるだろうとお願いしたが、この選択を僕は後で後悔することになる。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
保健の先生は不在なことが多い。
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作者名：黒梦 | 作成日時：2020年10月7日 0時
