幸せ60-鯉伴side- ページ18
鯉伴「・・・A。」
名を呼べば、ビクッと肩を揺らす。
頭に置いていた手を肩に移せば、Aはさらに顔を俯かせた。
鯉伴「お前のせいじゃねぇよ。」
何の飾りもなく素直にそう言えば、俯いていた顔がバッと俺を見上げる。
おお、いい勢いだねぇ。首大丈夫か?
「でも、俺があの時ちゃんと守れなかったから…」
鯉伴「まーだそんなこと言ってんのかい。
あのなぁA。
前にも言ったが、俺はお前に守られたんだ。
その事実に間違いはねぇ。
俺が戦えなくなっちまったのは、ただの俺の力不足さ。
ガキが気にする事じゃあねぇんだよ。」
両手で小さな顔を包み込み、潤んだ目と視線を合わせる。
鯉伴「A。お前は悪くない。誰も悪くない。
だから、ありもしない罪を背負って、与えられてもいない罰を受けようとしなくていいんだ。
もう、いいんだよ。」
そう言えば、Aは大きく目を見開いた後、その目を伏せた。
そして俺の手に自分の手を重ね、小さく「うん。」と呟いた。
鯉伴「ったく、面倒な事考えやがって。ガキは何も考えず遊んでな。」
「親父が何も考えてねぇだけだろ。」
鯉伴「ほ〜〜?偉大な父にんな生意気言うのはこの口かい?ん?」
「に゛ゃ゛ーーー!!はなぜーーーー!!!」
鯉伴「はっはっは!この顔の方が男前なんじゃねーかA」
「うるぜーグゾ親父っ!!」
鯉伴「い゛っづ!
てめぇっ、いきなり噛みつくやつがあるかよ!?」
「はんっ!ガキだからってなめんなよバーカ!!」
鯉伴「てめぇ、待ちやがれ!」
舌を出して逃げ出したAを追いかける。
走る姿はもうすっかり元気なものだ。
捕まえて抱き上げてやれば、笑いながら抱き着いてくる。
そのまま鳥居にもたれ掛かれば、嬉しそうな顔で大人しく腕に収まった。
随分久しぶりに甘えられた気がするぜ…。
うん、やはり俺の息子は世界一可愛い。
「…なぁ」
鯉伴「ん?」
「二代目降りんの?」
鯉伴「そうだねぇ…。まぁ親父が居るから平気だろ。
この程度で崩れるほどヤワな奴らでもねぇしな。
それともA、お前が継ぐかい?」
「ムリだよ。まだ子供だもん俺。」
鯉伴「ハハッ、そうだな。」
それから少しの沈黙があって
「帰るか。」と問えば、頷いて立ち上がり、手を差し出した。
それを握ってやれば、家路へ向かって歩き出す。
その姿にはもう、苦しさなんて少しもなかった___。
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紗那(プロフ) - 久しぶりに《この手に掴んだ幸せを》を一気に読み直したのですが、やっぱりstoryや展開などが大好きです(*^◯^*)更新停止になっているみたいですが、もう更新されないのでしょうか・・・・?更新されるのを待ってます(>人<;) (1月28日 17時) (レス) id: a0235214a5 (このIDを非表示/違反報告)
こと(プロフ) - めっっちゃくちゃに好きです。大好きですガチ萌えます!!!本当に最高すぎます!!!!もう更新されることは無いのでしょうか……?続き楽しみに待ってますm(_ _)m (12月11日 18時) (レス) @page50 id: 8bdd3d2cd9 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - すっごく、萌えます!!めっちゃ続き気になります! (9月25日 0時) (レス) @page50 id: 1fc4502f62 (このIDを非表示/違反報告)
ポッチ(プロフ) - めっちゃ好こです。男色もストーリーも大好きなので何度も読み返してしまいます。更新はもうされないのでしょうか? (5月24日 11時) (レス) id: bc736021f3 (このIDを非表示/違反報告)
れもん - おわーーー!!好きです!好きすぎます!!!このままリクオも混ざって…まさか若菜さんが…良いですね!!!!!鯉伴様もカッコ良すぎる!!続き、待っております!でも、無理はなさらないでください! (2022年10月25日 1時) (レス) @page50 id: 4d12249e4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:泪 | 作成日時:2017年4月10日 15時