幸せ58 ページ16
気が付けば、そこにいた。
近所にあるさびれた神社。
ついこの前、恐ろしい悪夢を迎えた場所だ。
そこに、Aは一人立ち尽くしていた。
肩で息をし、心臓の動機が激しいあたり
屋敷から走って来たのだろう。
しかしそんなことはどうでもよかった。
“鯉伴「あの時、俺ぁ…
ほとんどの畏れを失っちまったのさ。
俺はもう、戦えねぇのさ。」”
あの時、というのは、あの日の事だろう。
戦えない？親父が？
あの、強くてカッコよくて、負け知らずの親父が…？
あの日のせいで…？
血液が、疑問が、父の声が、あの日の光景が、困惑が、
頭の中をぐるぐると慌ただしく駆け巡り、
大人しく思考させることを許してくれない。
心臓が痛くて張り裂けそうなのは、走ってきたことだけが原因ではない。
「な、んで・・・？」
Aはそう呟きながら
頭を抱え、胸を抑え、その場に崩れ落ちた＿＿＿＿。
・
・
・
気が付けば辺りは真っ暗。月明かり以外闇を照らすものが何もなかった。
Aは相変わらず、神社の庭で一人崩れ落ちていた。
混乱は収まった。
しかし、その結果Aは最悪の答えに行きついてしまった。
それがAを、ただただ絶望させていた＿＿＿。
「屋敷に姿が見えねぇと思ったら…、こんな所にいたのかい。」
その声にゆっくりと振り向けば
眉間に皺を寄せた父が立っていた。
肩が若干上下しているのを見るに、結構な時間と範囲を探し回ったようだ。
鯉伴「ったく、あまり心配かけるなってあれほど言ったろう。
何でよりにもよって一人でこんなとこに…」
「…ごめんなさい。」
鯉伴「ん？お、おう…。
(なんだ？やけに素直じゃねぇか…。)
とにかくここにはもう来るな。ほら、帰る…」
「ごめん、なさいっ…」
鯉伴「…A？」
Aの様子がおかしいことに気付いた鯉伴は、慌てて駆け寄る。
鯉伴「どうした、何があった？
確かにちょいと怒っちゃいるが何もそこまで謝らなくても…」
「ごめんなさいっ、俺の！俺のせいで…！！」
鯉伴「待て待て、一体何の話だ？
落ち着けA、本当にどうしたんだい？」
宥めようと頭を撫でる鯉伴を、Aは潤んだ目で見上げた。
「二代目、降りるって…！」
その言葉に、鯉伴は目を見開いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 977人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紗那(プロフ) - 久しぶりに《この手に掴んだ幸せを》を一気に読み直したのですが、やっぱりstoryや展開などが大好きです(*^◯^*)更新停止になっているみたいですが、もう更新されないのでしょうか････？更新されるのを待ってます(＞人＜;) (1月28日 17時) (
レス) id: a0235214a5 (このIDを非表示/違反報告)
こと(プロフ) - めっっちゃくちゃに好きです。大好きですガチ萌えます！！！本当に最高すぎます！！！！もう更新されることは無いのでしょうか……？続き楽しみに待ってますm(_ _)m (12月11日 18時) (レス) @page50 id: 8bdd3d2cd9 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - すっごく､萌えます！！めっちゃ続き気になります！ (9月25日 0時) (レス) @page50 id: 1fc4502f62 (このIDを非表示/違反報告)
ポッチ(プロフ) - めっちゃ好こです｡男色もストーリーも大好きなので何度も読み返してしまいます｡更新はもうされないのでしょうか? (5月24日 11時) (レス) id: bc736021f3 (このIDを非表示/違反報告)
れもん - おわーーー！！好きです！好きすぎます！！！このままリクオも混ざって…まさか若菜さんが…良いですね！！！！！鯉伴様もカッコ良すぎる！！続き、待っております！でも、無理はなさらないでください！ (2022年10月25日 1時) (レス) @page50 id: 4d12249e4c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：泪 | 作成日時：2017年4月10日 15時
