【あらき】大好きなのは、貴方だけ。2【歌い手】

Song*60 ページ28

生放送でリスナーさんに発表してからライブまで3ヶ月、前にも増して、忙しくて、楽しい日々が続いた。


CDに入れる曲の収録、特典の準備(ライブ会場が最初の発売所になるので、ライブ会場で買ったCDにだけ特典がつくようにした)、ライブの方もセットリストを決めたり、衣装を決めたり、グッズを考えたり…

ひとつのライブを作り上げる大変さももちろん感じたけど、華さんはじめとしたスタッフの皆さん、色々助言してくれたお兄ちゃんたちと一緒に作り上げるのはやっぱり楽しくて、本当に、あっという間の3ヶ月だった。



そして今日はいよいよ、明日を本番に控えた前日リハ。

バンドメンバーさんや照明さん、最後に前私が2人のライブに出たのとほぼ同じ形でサプライズ登場してくれるお兄ちゃんとあらきさんとも念入りに打ち合わせをして、前日リハも、幕を閉じようとしていた。


最後にちょっとだけわがままを言って、あの時と同じように、誰もいないステージの真ん中から客席の方を見る。

明日ここには、私を見に、私に会いにたくさんの人が来てくれる。


緊張がないわけでは勿論ない。あれだけたくさんの人が楽しみにしてくれてる。友達も見に来てくれる。絶対に、楽しかったと思ってもらえるライブにしなくちゃいけない。


でも、あの時のような怖さは微塵もなかった。

それは、きっと、



『…あなたのおかげです』



私にライブの楽しさを教えてくれた。

私が楽しければ、お客さんも絶対に楽しんでくれることを教えてくれた。


誰かと歌うことの楽しさを、嬉しさを、愛しさを教えてくれた。


声に出したら誰かに聞こえてしまうかもしれない、秘めた思いがバレてしまうかもしれない。

だからそっと、心の中だけで呟く貴方の名前。


それだけで、貴方の笑顔が心に浮かんで、こんなにも暖かい気持ちになる。



でも、私のそんな心で呟いた声すらも拾って、近くで笑ってくれるのも、いつも貴方でしたね。



「…Aちゃん」

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