Song14*〜あらきside〜 ページ16
あ「録音…俺、近くで見てちゃダメかな?」
気づいたら、こんなことを口走っていた。
目の前には、ぽかんとするAちゃんとなるせ。
当たり前だ、俺だって驚いてる。
確かに俺は千雪さんのファンだけど、録音に立ち会わせてくれなんて、望んでいることすら気づいていなかった。
あ「あっごめん!俺変なこと言った!気にしないで!」
『…いえ、大丈夫ですよ。』
あ/な「「…え?」」
『いいですよ。…聴いて、ください。』
成瀬家の家にある防音室に3人で入る。
Aちゃんが準備している間に、俺となるせは防音室のすみっこに座った。
な「…あらき。」
あ「…ん?」
な「どうしたんだよ、急に。」
あ「ごめん、正直俺もよくわかんない。」
何だそりゃ、と呟いてなるせは膝に顎を乗せてAちゃんの方を見る。
つられたように俺もAちゃんの方を見る。
歌う準備が整うにつれて、Aちゃんは徐々に、千雪さんに変わっていくようで。
『準備、出来ました。…歌いますね。』
そう言って、Aちゃん…否、千雪さんは、ヘッドフォンをしてそっと目を閉じる。
永遠にも感じる静寂の後、すぅっと息を吸い込んだ千雪さんは、音に、言葉に、命を吹き込み始める。
Aちゃんのことは、妹みたいに思っていた。
少なくとも、そう思っていたつもりだった。
相方であるなるせの、大切な妹。
俺のファンだと言ってくれる彼女は、優しくて、可愛い。でも、ちょっとだけネガティブで、自己肯定感が低い。
どこか危なっかしい彼女を、もう1人の兄として、なるせと守っていきたいと思っていた。
なのに。
“間違ったな 間違ったな 君に恋してしまったな”
“甘いものはもう いらないくらい 好きみたいです”
悲しそうに、切なそうに、愛しそうに。
まるで、自分に言い聞かせているかのように。
苦しそうに、今にも泣きそうに歌う彼女を見て、涙が溢れるのは何故なのか。
誰かを想って歌っている、その「誰か」を知りたいと思ってしまうのは何故なのか。
歌い終わって、泣いてる俺を見て驚いたような顔をする彼女を、思わず抱き締めてしまったのは何故なのか。
固まってしまった彼女に、ごめん、感極まっちゃった!最高だったよ!なんて、誤魔化してしまう俺には
まだ、答えを出す勇気はない。
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璃穂(プロフ) - ぬー@青森の最終兵器さん大好きさん» ああああありがとうございます!!返信遅くなりすぎましたごめんなさい…!もうすぐ2の方も更新再開する予定です、またよろしくお願いいたします! (2020年6月29日 21時) (レス) id: a64256496e (このIDを非表示/違反報告)
ぬー@青森の最終兵器さん大好き - あらきさん推しなので嬉しいです!ニヤニヤしながら見てます!!たまに、発狂もしてます笑あらきさんカッコよすぎ… (2019年10月3日 15時) (レス) id: 856e5af163 (このIDを非表示/違反報告)
璃穂(プロフ) - うめさん» コメントありがとうございます!夢主ちゃんには基本常に愛されててほしいという気持ちがそんなところにも出てしまいました笑 (2019年7月1日 17時) (レス) id: a64256496e (このIDを非表示/違反報告)
うめ(プロフ) - まふくんの彼女?ってやつのところで"可愛い"女の人って言っててちょっとほんわかしました。← (2019年7月1日 16時) (レス) id: 1c95ccfd2a (このIDを非表示/違反報告)
一ノ瀬 霜(プロフ) - 璃穂さん» リクエストありがとうございました!めっちゃ良かったです!! (2019年2月12日 22時) (レス) id: c3dd7470fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:璃穂 | 作成日時:2018年11月26日 11時