▼小話 ページ6
まだ4人で暮らす少し前、なるせのお家に居候していた頃のはなし。(43話あたりのはなし)
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「ねーマヨ」
晩御飯の食器を洗い終えたタイミングでソファーに座っていたなるせが私の名前を呼んだ。
「ん〜？なぁに？」
濡れた手を拭いて、彼のとなりに座ると何か言いたげな顔でこちらを見つめるなるせ
「どうしたの？」
「…アルバムってさぁ、もう収録曲とか決まってんの？」
「まだ、全然だよ？」
「…じゃあさ」
「これ使いたい」
そう言ってなるせがポケットから取り出したのは随分と前に私がなるせにあげた《イマダマヨウがなんでもする券》だった。
「なんでもする券？」
「うん」
まだ彼の誕生日を知らなかった頃、楽屋のメモ帳に慌てて書いた走り書きの券をなるせはずっとお財布に仕舞い込んでいた。
大切な切り札は最後まで取っておくと言った彼は何を望むのだろうか。
なるせの顔を見る。
いつになく真剣な顔をしていた。
「俺にイマダマヨウの曲を書かせて欲しい」
「えっ、…いいの？でもそれって私は嬉しいけどなるせは…？」
なるせのお願い事なのに、私が嬉しくなっていいの？
そんな困惑を彼に投げ掛けるとなるせは優しく笑って話を続ける。
「俺の作った曲をお前が歌ってくれたら嬉しいよ。…アルバムに入れる入れないはマヨとか上の人が決める事だからあれだけど、お前の門出に俺からも花を添えさせて欲しい」
「…ッ、」
真面目な顔をした彼の瞳を見詰める。
そうだ、なるせはこういう事をさらりと言ってのけてしまう奴だった。
ずるいなぁ、かっこいいな…。
思わず目頭が熱くなるのを感じて、気付いた時には涙が溢れていた。
「ちょっと、泣くなよ」
少し焦り顔のなるせ
なんか拭くもの…と席を立とうとする彼の背中に抱き付いてそれを引き止める。
「なるせ…ありがとう」
「…！……うん」
「持つべきものはなるせみたいな優しくてカッコ良いラッパーの友達だなぁ〜」
泣いてしまったのが恥ずかしくて、背中にくっ付いたまま少し茶化してみせる。
「ふふ、そんな奴なかなか居ねぇよ？」
「じゃあ、私は幸せ者だ〜」
「そうかもね」
顔は見えないけれど、あたたかな背中が笑う度に小さく揺れて、背中越しに優しく響く彼の低音がとても心地良かった。
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うたたね(プロフ) - ゆんさん» ありがとうございます☺️✨楽しんでいただけたようで幸いです💕 (10月1日 16時) (
レス) id: 6910b7a819 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 面白すぎて一気に読んでしまいました😍‼️幸せの具現化すぎて、一生読んでたいです😭🙏🏻 (10月1日 11時) (レス) @page20 id: 0439cd6fa9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うたたね | 作成日時：2023年6月24日 21時
