▼ ページ38
「散らかっててすみません。こんな物しかないんですけど…」
すみません、そう言って差し出されたペットボトルのミネラルウォーターをありがたく受け取る。
「いやぁ何言ってるんですかぁ、全然キレイじゃないですか」
「…ありがとうございます」
「昔、俺の職場の近くに住んでた時なんて…ねぇ？」
「うわぁ、忘れてくださいよ…！」
慌てふためく彼女。
「マヨさんもなるせも上京したてで良く家まで行って飯作ったりしてましたねぇ」
「その節は大変お世話になりました」
「いえいえ」
「でも、本当に…作業と大学の課題に没頭し過ぎて音信不通になるとあらきさんが生存確認しに来てくれてましたもんね」
「そうっスよ？めいちゃんやなるせが『マヨと連絡が取れない！死んでるかも！』って騒いで…」
「仕事終わりのあらきさんが食材持って来てくれましたね」
「あの頃の生活能力の無いマヨさんが今や立派に料理上手だなんてねぇ」
「本当に不思議ですね」
ずっと昔の話のような、つい昨日の事のような気さえする。
彼女が歌い手を引退宣言をした直後、いつもみたく彼女の家に押し掛ける事だって出来た。
でも、俺はそれをしなかった。
あの時、姿を消した彼女とこうしてまた一緒にライブをしたり、酒を酌み交わす日が来るなんて思ってもいなかった。
・
テーブルに置いたままのスマホの画面にタクシーアプリの通知が表示される。
「あ、タクシー来たみたいです」
「結構早かったですね」
「捕まって良かったっスわ」
「そうですね」
2匹の可愛い猫ちゃん達に別れを告げて玄関へと向かう。
靴を履いてドアを開けた俺に続いて外へ出ようとする彼女を制止する。
「あ、ここでいいですよ」
「え、下まで送りますよ！」
「俺を見送った後に転ばれたら困りますから」
「…それもそうですね」
案外素直に受け入れた彼女
「はい、マヨさん今日はありがとうございました」
「こちらこそ、また誘ってください」
「今度はめいちゃんも誘いましょう」
「来るか分からないですけどなるせも誘いましょうね」
「そうですね」
そんな次の約束をして別れた。
この約束はきっとすぐに実現するのだろう。
なんとなくだけどそう思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 418人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うたたね(プロフ) - あいらいんさん» あいらいん様 コメントありがとうございます😉あと少ししたら登場していただきますのでお楽しみに…！ (2023年4月2日 23時) (
レス) id: 6910b7a819 (このIDを非表示/違反報告)
あいらいん - このお話大好きで毎日楽しみにしています！nrsちゃんとの絡み楽しみです！いつもありがとうございます！ (2023年4月2日 22時) (レス) @page26 id: c168593882 (このIDを非表示/違反報告)
うたたね(プロフ) - 庭様、梓月様、もく様 コメントありがとうございます。励みになります…！これからも楽しんでいただける様に頑張ります☺︎ (2023年3月23日 21時) (レス) id: 6910b7a819 (このIDを非表示/違反報告)
もく(プロフ) - うたたねさんの書かれる文章がとってもとっても大好きなので更新とっても嬉しいです;;これからも応援してます！ (2023年3月22日 20時) (レス) @page14 id: 3fd6a15bc8 (このIDを非表示/違反報告)
梓月(プロフ) - ...8000字ですか｡本当にすごいですね。諦めず書いてくれてありがとうございます。これからも頑張ってください。応援してます！ (2023年3月22日 19時) (レス) @page14 id: 4db26ed0f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うたたね | 作成日時：2023年3月3日 18時
