短編集【anm】 (ページ40)

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とっておきの魔法(nrs) ページ40

「…仕事行きたくない」

社会人として働く彼女が朝の貴重なはずの時間に俺に抱き付いたまま離れない…

「Aさん？もう出ないとヤバくない？」
「…やばい。けど、行きたくない」

小さく唸りながら俺の胸に顔を埋めるA
とても可愛いけれど流石にそろそろ家を出ないといけない時間だろうに、珍しくぐずっている。
ここ最近、仕事が忙しいって毎日ヘロヘロで帰ってくるもんなぁ…。
さて、どうしたものか…
彼女の髪を撫でながら考えていると、ふと良いことを思いついた。

「…じゃあさ、俺が魔法かけてあげる」
「え…？」
「ちょっと待ってて？」
「…うん」

きょとんとした顔の彼女を一旦ソファーに座らせて、2人の寝室へと向かい魔法に必要なアイテムをゲットして彼女の元へと戻る。

「目ぇ瞑って？」
「…？うん」

目を瞑った彼女の頭上に俺の香水をシュッと吹きかけて抱き締める。

「…なるせくんのにおい」
「ど？元気出た？」
「…でた」
「よしよし。今日一日、Aが頑張れますよぉに！」

恥ずかしそうに顔を赤らめる彼女の頭を優しく撫でた。

「で、俺はAの香水をつける…！」

じゃじゃん！と効果音を口にしながらついでに持って来た彼女の香水を掲げる。

「大丈夫？甘すぎない？」
「Aのもユニセックスでしょ？」
「うん、そうだけど」
「ね、俺にも頑張れる魔法かけて？」
「…いいよ」

そう言って彼女の前に屈んで見せると恥ずかしそうな顔をした彼女が俺の頭上に香水をふりかける。
そして、香りのベールを身に付けた彼女が俺をギュッと抱き締めてくれる。

「ありがと」
「どういたしまして」
「あ、もう出ないとやばいよ！」
「え、あ、うん！」

頬をほんのりと染めた彼女にカバンを持たせて玄関までお見送り。

「なるせくん、いってきます…！」
「うん、気をつけてね？」
「はぁい」
「…あ、A。忘れ物」
「え、なに？」

ドアノブに手をかけた彼女の腕を引いて、可愛いサクラ色の唇にキスをする。

「Aが頑張れるとっておきの魔法」
「…ッ！ばかっ！」

彼女の瞳がまあるく見開かれて、頬がさくらんぼみたいに真っ赤になっていく。

「いってらっしゃい！早く帰ってきてね？」

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べったーにのせた小話でした。
🍥ちゃんの短編はリクエストを含めてTwitterのみに上げているSSがいくつかあるので気が向いたらこちらにも納めます…！