短編集【anm】 (ページ38)

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「そこの席って空調の風、直風ですよね？俺と席変わりましょう」
「え、いいんですか？」
「えぇ、俺暑がりなんで。でも、担当の人が戻って来たら温度上げてもらいましょうね」
「ありがとうございます」

お言葉に甘えて席を交換してもらう。
あらきさんのいう通り、私の座っていた席だけが直風だったらしく交換してもらった席は快適な風量だった。

「上着も嫌じゃなければ袖通してもらって大丈夫なんで」
「すみません…ありがとうございます」

有り難くあらきさんの上着を羽織るとフワリと香るいい匂いに思わずドキリとした。

「…なんか顔赤いですけど大丈夫ですか？」
「え！？そ、そうですか！？」
「熱あります？」

あらきさんの手が私の額に近付いてきたので慌てて首を横に振って否定をした。

「いや！ないです！ちょっとあらきさんのお洋服からいい匂いがするな〜って思っただけです！」
「…えっ」

きょとんとした顔のあらきさんを見て、やってしまった…と思い慌てて弁解する。

「ち！ちがうんです！すみません！気持ち悪い事言って…！あ、上着お返しします！！」
「いやいや！Aさん寒いんでしょ？大丈夫ですから…！」

上着を脱ごうとした手をあらきさんに止められたタイミングで担当さんが戻ってきてしまった。
すみませんねぇ、と言いながらホワイトボードに何かを書き始める担当さんに聞こえないくらいの小声で呟く。

「あー、恥ずかし…」
「…俺が勝手にした事なんで気にしないでくださいね」
「いえいえ、助かりました。ありがとうございます」
「なら良かったです」
「…あらきさんって本当に周りを良く見てますよね」
「…そうっすか？」

気の所為ですよ、と笑うあらきさんの耳が少し赤くなっているのに気が付いてしまった上に、あらきさんの香りに包まれた私はその後の打ち合わせが身に入らなかったのは言うまでもない。

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リクエスト
《打ち合わせで寒がっているのにすぐ気付いて、周りに気づかれないよう声をかけ、上着をくれるあらきさん》

リクエストありがとうございました！