短編集【anm】 (ページ37)

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気遣いさんと寒がりさん(ark)＊ページ37

所謂、音ゲーと呼ばれるリズムゲームの楽曲を歌い手が歌うというタイアップ企画の打ち合わせに呼ばれて小さな会議室で打ち合わせ中…

(うー、寒い…)

担当の方に促されて座った席は空調の風が直撃する席でまだ最初は良かったものの、打ち合わせ中盤にもなると流石に寒くなってきた。
もしかして私だけが寒いのか？と思って担当さんの話を聞きながら、隣に座っているあらきさんをチラリと盗み見ると暑くも寒くもなさそうな顔をしていた。

(空調の温度上げてもらえないかなぁ…？でも、私だけが寒いなら他の人には迷惑だよね…)

暑いからってカーディガン置いて来なければ良かった…今朝の自分の行動を後悔しながら腕をさする。

「あ、確認なんですけどこれって〇〇って事ですかね？」
「えーっとですね…」

あらきさんが質問をすると、担当さんは手元の資料を確認しだす。

「…Aさん」
「はい？」
「寒いですか？」
「…あはは、ちょっとだけ」

あらきさんが小声で私に聞いてきたので私も小声でそう言って笑うと、あらきさんは自分の荷物の上に置いていた上着をサッと私の肩に掛けてくれた。

「…！」

思わずあらきさんの方を見ると担当さんが話の続きを話し始めてしまい、あらきさんにお礼を言う事が出来なかった。
せめて目配せで一先ずお礼を…とあらきさんを見つめてみるが、私の視線には気付いて居ないのか担当さんの話を真剣に聞いていた。

・

そのまましばらく話し合いは続いて、バイブレーションで鳴る誰かのスマートフォン。

「あ…すみません、ちょっと電話が…」

申し訳なさそうな顔をした担当さんが席を外して、会議室に私とあらきさんの2人になったタイミングであらきさんに話し掛ける。

「あらきさん上着すみません」

ありがとうございます、と頭を下げるとスンとした表情のあらきさんが私の席を指す。