短編集【anm】 (ページ33)

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「ずっとずっと、好きでした」(nrs)＊ページ33

馴染みのバーで私の隣に座っているのは、大親友のなるせ。
彼とはもう随分と長い付き合いで、仕事の話も恋愛の話も良い事も悪い事も全て彼に話してきた。
気心知れた私たちは必然的に距離も近くてお互いにパーソナルスペースなんてほとんどない。
周りから付き合ってるの？なんて聞かれる度、「男女の友情ここにあります！」を謳い文句に肩を組んで笑って来た。

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今日の話題はもっぱら、浮気をした挙句自分の事は棚に上げて私の事をこっぴどく振った元カレについて…

「も〜！本当ッに最悪！！！」
「んはは！この間まであんなに大好き〜！とか言ってたのに」
「も〜！！なるせの周りにいい人居ないの！？」
「おらんおらん！あ、じゃあ俺とか〜」
「ないないない！」

いつものお決まりのネタに2人で笑う。

本当はなるせが私の彼氏だったらいいのに、なんてもう何十回も考えた。
それでも今まで続けてきたこの関係を変えてしまうのが怖くて、本当の気持ちに蓋をして、いつも茶化して誤魔化してきた。

「ダハハァ〜！だめかぁ〜！！」
「なるせは親友だからなぁ〜」
「…そっかぁ、そうだよなぁ〜！！」

一瞬、なるせが悲しそうな顔をした気がしたけれど、次の瞬間にはいつものおちゃらけたなるせに戻っていたので私の勘違いだという事にして、2人で目を合わせてゲラゲラと笑った。

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心地良い話し声がする…
ぼやけた意識の中で少しずつ今の状況を理解していく。

ヤケ酒を煽り過ぎた私はどうやら机に突っ伏して眠ってしまっていたようだ。
丸まって眠っていた所為で背中が痛い。
起き上がるのも面倒で薄目を開けると隣ではなるせが1人でグラス片手にお酒を呑んでいた。

「そうなんすよぉ」
『報われない恋ってやつですね…』
「本当、全然男として見られてないみたいで悲しいっス！」

どうやらバーテンダーさんと話をしているようだ。

(なるせの恋バナなんて聞いた事無かったなぁ)

いつもなるせの恋愛に関して話題を振っても上手く交わされて結局は私の方に戻されてしまうから彼がそんな話をしているのは意外だった。

(そうだよね、なるせにも好きな人位居るよね…)

チクリと胸が痛む。
バーテンダーさんが別のお客さんの所に呼ばれてその場を離れていく。

「ほぉんと、報われないなぁ…」

1人になったなるせは頬杖を突いて私の方を見つめながらグラスを煽ってぽつりと呟いた。

(ねぇ、なるせ。今、誰を想っているの？)

なるせにそんな顔をさせるのは一体誰？
その苦しそうに溢した言葉に鼻の奥がツンとして薄目で見ていた視界が涙で滲む。