短編集【anm】 (ページ32)

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▼ オマケページ32

【side:mey】

「なぁるせくんっ！2件目行くよね！？行こ〜〜！！！」
「…行かないよ」

支払い男気じゃんけんに勝って支払いを済ませ、財布を仕舞うなるせの肩に腕をのせて絡んでいると目の前を歩いていた筈のあらきさんとAがいない。

「あれ？2人は？」
「え…？」

辺りを見回すと少し離れた所、大通りの方へと歩いていくあらきさんとAを発見
ニヤリと笑うなるせと2人の後を追う。

「あらきさん、あらきさん！」
「はいはい…」

気付かれない程度の距離感で2人の背後をついて行く。
Aがあらきさんの腕に絡んで駄々を捏ねているようだ。

「一緒に帰りましょうよぉ」
「…わかりましたから」

溜め息を吐いたあらきさんは停まっていたタクシーに近付いていく。

「おぉっ！？これはもしかしてぇ…！？」

ニヤニヤと楽しそうにデカい声を出したなるせの口を慌てて塞ぐ。

「はい、先乗ってください」

そう言われて嬉しそうに先に乗り込むA。

「危ないですから、シートベルトもしてください？」
「はぁい」

手元が覚束ないのか上手くシートベルトを締められないAを見たあらきさんが後部座席に膝をのせて半身だけタクシーに乗り込む様な形で彼女のシートベルトを締めていた。

「じゃ、お願いします」

助手席のヘッドレストに手を掛けたあらきさんが運転手さんにそう告げてタクシーのドアを閉める。

「え゛っ！！？あらきさぁん！！」

ドアを閉める直前に聞こえたAの悲痛な声を残して発進するタクシー

路肩に突っ立ったままのあらきさんは遠くなるタクシーを見つめている。

「…2人ともそれで隠れてるつもりですか？」

「あ、バレてました？」
「バレバレですよ」

あらきさんの方へ近付くと、Aを乗せたタクシーは信号を右へ曲がり見えなくなった。

「え、あれ大丈夫なんですか？」
「…アプリで呼ぶ時に行き先も入力してありますし、女性のドライバーさんでお願いしたんで大丈夫です」

珍しく不機嫌そうな顔をしたあらきさんは、矢継ぎ早にそう言い切ると深い溜め息を吐いてその場に座り込んだ。

「…ふーーーーーっ」

「あらき、よく耐えた」
「…お疲れ様です」

なるせと俺は示し合わせたかの様にあらきさんの肩に手を置いて彼の健闘を讃えた。

「…2件目いきますよ」
「「お供します」」

疲れ切った顔をしたあらきさんがそう言うので、再び夜の街へと繰り出す事になった。
こうして《酔っ払いA被害者の会》の会員の男達の夜は更けていくのだった。