短編集【anm】 (ページ30)

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ウィスキー・トゥデイ(ark)＊ページ30

「「じゃ〜んけ〜ん！！！」」
「ぽんっ！」
「ぽぉん！！！」
「「う゛わぁ〜〜〜っ！？」」

久々に集まった4人での飲み会
通された個室はよくある2対2で向かい合って座るタイプの座敷で、めいちゃんとなるせがAさんの隣を賭けてじゃんけんを始めたタイミングでAさんはスッと俺の横に座った。

「「え゛っ！！？」」

それを見た2人が悲痛な叫びを上げているのなんて全く気にしていないAさんはメニューを開きながら、呆然と立ち尽くした2人に座る様に促す。

「2人も早く座りなよ〜、あ、あらきさん何飲みますか？」

渋々と言った顔で俺の向かいに座った2人からの視線が突き刺さる。

・

時折、隣に座った彼女の腕が当たる位の距離感に若干ドギマギしてしまい自ずと気を紛らわす為の酒が進む。

・

宴もたけなわ
楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、俺の隣で今にも寝てしまいそうなAさんを見てめいちゃんがお開きの合図を出す。

「そろそろお開きにしましょうか！」
「そうするかぁ」
「そうですねぇ」

立ちあがろうとするとぐにゃりと歪む視界
どうやら飲みすぎたらしい。
ふらつく足元、バランスを崩した身体
咄嗟に伸ばした俺の手はAさんの華奢な肩を掴む

「うぉっ！？」
「きゃっ、」

彼女が俺の体重を支えられる訳もなく、彼女を畳に押し倒す形になってしまった…

「うわぁ！！？Aさんすみませんっ！」

きょとんとした表情のまま押し倒されたAさんは、すぐ退きますから、と言い掛けた俺の顔を見てふにゃりと笑ってこう言った。

「んふふ、あらきさんってば大胆ですねぇ」

酒に酔って潤んだ瞳でこちらを見つめる。

「あらきさん…？」

舌足らずな甘い声でフリーズしている俺の名前を呼びながら、こてん、と首を傾げるあざとさに脳内で警報が鳴り響く。

「ッ！！？」

「ちょっ、あらきさん落ち着いて…っ！！？」
「あらき！あらきっ！！…どうどうどう！」

めいちゃんとなるせが俺の首根っこを掴んで俺とAさんを引き剥がす。

Aさんが酔うと甘えたになる事は前々から知っていた。
だから大人数の飲み会では出来るだけセーブさせて飲ませるし、甘えたモードになったとしても俺たちと一緒にいるから大体はなるせかめいちゃんがターゲットとなる事が多かった。
ふにゃふにゃと甘える彼女にしどろもどろになる2人を見て爆笑するのが俺のいつもの立ち位置で、こんな風にロックオンされるのは初めてだった。