短編集【anm】 (ページ29)

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「ごめん。俺はさ、感謝と友情って聞いた…」

胸を引き裂かれそうになりながら俯いたままの彼女に告げる。
ぱっと顔を上げたAは今にも泣きそうな顔で笑った。

「あはは、そっかぁ。も〜、なるせくんったらぁ勘違いしちゃったじゃん！…しかも今日、3月8日って男の人が女の人にミモザを渡して想いを伝える日なんだよ？」
「…ごめん、知らんかった」
「……そっかぁ」

沈黙。
通り過ぎる人々の声がやけにうるさく聞こえた。
再び俯いたAが震える声で呟く。

「私たちってずっと友達のまま…？」

泣きそうな顔をしたAに胸がズキリと痛む。

「…そんな顔させてごめん」
「…ううん、私の方こそごめん」

顔を伏せたAの足元
ぽろぽろと地面に落ちる透明な雫

「A、」
「ごめん、やっぱり今日はお開きにしてもいいかな…？こんな顔なるせくんには見せたくないや」

「ごめん、またね…」

震える声でそう告げて、涙で濡れた瞳のAが俺の前から立ち去ろうとするのを腕を引いて止めた。

「…A、待って！」
「…えっ、」

外気に晒されて冷たくなった彼女の手を握って、逸らされる視線をどうにか俺の方に向かせる。

「A、こっち向いて？」
「…やだ」
「おねがい」
「…」

鼻を鳴らして泣きじゃくるA
涙でぐちゃぐちゃな顔
そんな顔させてごめん。

「…A、俺はこんな活動してるし恋人が居るとかおおっぴらには言えない…それこそ秘密の恋になっちゃうけど、Aにそんな顔をさせるのはやだ。俺もこの気持ちとちゃんと向き合いたい」

「Aが好きです。俺と付き合ってくれませんか？」

「…へ？」

驚いた顔をした彼女の涙は一瞬止まって、次の瞬間には今までよりも大粒の涙をぼろぼろと流すA

「〜〜〜っ、ほんとっ？私、なるせくんの彼女になってもいいの…っ？」
「うん、ほんと」
「〜〜ッ！！」

涙で濡れた瞳を輝かせて抱き着いてきたAの体を慌てて抱き締める。
睫毛さえ触れてしまいそうな距離

「…A、俺をAの彼氏にしてくれますか？」
「…っ、もちろん！！」

街ゆく人に見られているのなんて気にせずに俺たちはキスをした。
こうして、ずっと隠していた気持ちは勘違いから変化して恋へと変わった。

リクエスト
《好きな女性に花言葉でアプローチするなるせくん(ミモザ秘密の恋・友情)》

この話を書くにあたり、私の方から花言葉を二つ追加させていただきました。
楽しんでいただければ幸いです。
(ミモザの花言葉：感謝・真実の愛)