短編集【anm】 (ページ25)

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歳下わんこくん翻弄劇(mey) ページ25

「俺よりあの人の方がいいんですか…？」

大人数での飲み会後、そろそろ解散って時に後ろから腕を引かれ不意に掛けられた言葉

「え…？」

振り向くと真っ赤な顔をしためいちゃんが少し不機嫌そうに私の方をジッと見つめていた。

「絶対俺の方がAさんを幸せに出来ます」

「え？何？…めいちゃん、酔ってる…？」
「酔ってませんっ！」
「うん、結構酔ってるね…」

多分、お店を出る前に私が他の先輩にこの後二人で飲みに行かないかと誘われているのを目撃したのだろう…

めいちゃんが以前から私に好意を持ってくれているのは知っている。
しかし、残念ながら彼は歳下
私の恋愛対象守備範囲外で可愛い弟分なのである。

「あの人について行くんスか…？」
「んー、どうしよっかなぁ」
「勘弁してくださいよぉ…」

私の手首を掴んだままその場にしゃがみ込むめいちゃん
本当はもうすでにお誘いを断っているのだけれど、彼が子犬みたいな顔をするのが面白くてちょっとだけからかってみる。

「めーちゃん♪」
「…なんですか」

私もしゃがみ込んで膨れっ面の彼の頬を指で突くと唇を尖らせてゆるく首を振って拒否される。

「もーこっちむいて…！」
「ちょ、」

頬を両手で挟んで少し強引に彼の顔をこちらに向かせて、頬にキスをすると見開かれる彼の瞳。
金魚みたいに口をぱくぱくしているのがちょっと間抜けでそれもまた可愛い。

「さっきの言葉、ちゃんと素面の時に聞かせてくれたら考えてあげる」
「はぁ…っ！！？」
「んふふ、顔真っ赤」
「ちょっ！Aさん！？」

くるくる変わる彼の表情を見ていると、歳下の可愛いわんこくんを翻弄する恋も楽しいかも…なんて思っている自分がいて、恋って本当に面白い。

「あ、タクシー来た」
「え！ちょっとぉ…っ！！」

彼にサクッと別れの言葉を告げてタクシーに1人で乗り込む。

「じゃあ、めいちゃんまたね！おやすみ」

酔いと混乱でキャパオーバーって顔をしているのに、私が手を振ると律儀に手を振り返してくれるのがなんとも可笑しい。
真っ赤な顔で呆然と離れて行くタクシーを見詰める歳下わんこくんに私の方が翻弄されてしまうのはまた別の話…