短編集【anm】 (ページ24)

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甘やかし(mey)＊ページ24

ぐるぐる回る思考回路
今日あった嫌な事が思い出されて湯船から上がる気力すら薄れてしまう。

「ちょっと、Aー？生きてるー？」

上がるタイミングを失っていると、脱衣所のドアが開く音がして磨りガラスのドア越しにめいちゃんが声を掛けてきた。

「…いきてる」
「茹蛸になっちゃうよー？早く上がっておいでー」
「はぁい」

彼の声をきっかけにようやく湯船から上がってシャワーを浴びた。

・

やっとの思いでお風呂から上がりリビングへ行くとそれに気付いた彼がスマホから顔をあげる。

「あらら、もしかしてしょんぼりさん？」

彼には全てお見通しのようで、手招きをされて彼の隣に座る。

「…うん」
「あらあら、頑張り過ぎちゃった？」
「めーちゃん」
「うん？」
「ぎゅーってして」
「いいよぉ」

彼だって毎日慌ただしく動き回って大変だろうに、こういう時は私のお願いをなんでも叶えてくれる。本当に優しい人だ。

「ねぇ、A？今日はもう寝ちゃおっか」

ぎゅうっと抱き締めてくれた彼が耳元で優しく囁く。

「…だめ、まだ作業終わってない」
「それって今日じゃないとだめなやつ？」

子犬みたいな顔をしてこちらを見詰められてしまえば私の心は簡単に揺らぐ。

「…だめじゃない。でも…」
「Aが毎日頑張ってるの知ってるよ？でも今日はもうおしまい！ほら髪乾かしてあげる」
「ありがと…」

洗面所からドライヤーを持って来た彼の脚の間に座ってドライヤーをかけてもらう。
なんて、致り尽せり…。

「はい！終わり！」
「ありがと」

「はい、ベッド行きますよぉ」
「え、うわっ！ちょっと！？」

彼に抱き抱えられて寝室へと向かう。

「はい、ごろーん！」
「うわぁっ」
「はい、にゃんぴ！」
「え、ちょっと」

ベッドの上に投げ出され、めいちゃんの後ろを付いて来ていた猫ちゃんを小脇に抱えさせられる。

「はい、お布団！」
「わ、」

「はい、おやすみのチュー」

理解も追いつかないまま布団を被せられ、その流れのまま不意に唇を奪われてしまう。

「へっ…？」
「俺もお風呂入ったらすぐ来るからさ、イイコで待ってられる？」
「…うん」
「うん、イイコ」

何が起こっているのか分からず、どさくさに紛れてもう一度キスをして寝室を後にする彼の背中を呆然と見つめる事しか出来なかった。

「〜〜〜っ！！」

呆然としままの私の腕からするりと猫ちゃんが抜け出して、ようやく状況を理解する。
たまにしか見せない年相応な彼の表情を思い出して思わず1人布団の中で悶える。

悩み事なんてすっかり吹き飛んでしまっていた。

リクエスト《自暴自棄で病んじゃう主さんを癒すanm》