短編集【anm】 (ページ20)

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この関係に名前をつけて(mey) ページ20

二人きりの夜には決まってお互いがベロベロになるまで飲んでいる気がする。
お酒とご飯の趣味が合って、飲みに誘えば大抵付き合ってくれる都合の良い飲み友達。
それが私とめいちゃんの関係。

今日も居酒屋から宅飲みという、いつもと変わらないお決まりの流れ。

「あ、お茶割りも〜らいっ！」

コンビニで買ってきたお酒とおつまみ、我が物顔で彼の家の冷蔵庫を物色してストックされた缶チューハイを拝借する。

「えー、いいけどさぁ」
「ありがと」
「どういたしまして〜、Aもなんか食べる？」

そう言うめいちゃんの手には大小様々なペヤング。
君は本当にペヤングが好きだねぇ…。

「えー、全部は入らないからちょっとだけ分けて欲しいかも…」
「はいよぉ〜！」

楽しそうに大きい方のペヤングのフィルムを破いてお湯を注ぎ、スマホでタイマーをかける彼をキッチンカウンターに頬杖をついてぼんやりと見つめていた。

「あ、水も飲みな？」
「ありがとぉ」

水の入ったコップを目の前に置いた彼の手が私の頬をするりと撫でる。

「あはは、A顔真っ赤じゃん」
「…っ、うっさい！めいちゃんだって赤いよ！」
「え〜？そうかなぁ？」

自分の頬を両手で挟んで小首を傾げるめいちゃん
その表情はずるくない…！？

酔いが回った頭から長年隠していた気持ちが言葉となって口から溢れる。

「…好きだなぁ」

「え？…ペヤングが？」
「え？」
「え？」

私、今なんて言った…っ！！？

「今、好きだなぁって言ったじゃん」
「え？言った？」
「言った…！え、何？」
「何って何が？」
「は？」
「え？」

クエッションマークの往来
訳のわからない状況に顔が熱くなっていくのを感じる。

「今の好きだなぁは何に対しての好きだなぁ？」

にんまりと悪戯っ子みたいな表情をした彼がこちらを見つめている。
もう後には引けないと悟って覚悟を決めることにした。

「…怒らない？」
「怒んないよ…！」
「…引かない？」
「何に引くのさ！」

ケラケラと笑う彼
この名前の付かない関係も心地が良くて大好きだったけれど、どうせなら当たって砕けてしまえ私の恋心…

「…めいちゃん」
「は…っ？」
「めいちゃんが好き…」

あんぐりと口を開けたまま停止している彼の顔がどんどんと赤くなっていく。
3分経過を告げるタイマーが鳴り響くキッチン
タイマーよりもうるさい私の心臓の音。
耳まで赤く染めた彼の目は相変わらず泳いでいる。

(あーあ、言っちゃった。)

もう逃げられない状況、この関係に名前を付けて