短編集【anm】 (ページ11)

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「おふろはいる」

ひとしきり笑い転げてようやく落ち着いた彼女は思い出したようにそう言った。

「酔っ払ってんだから危ないよ」
「じゃ、シャワーだけ」
「そんなふらふらなんだから明日にしなよ」
「えー、じゃあお化粧だけおとす」
「うん、そうしな？」
「なるせくんはシャワー浴びる？とまってく？」
「浴びない、泊まらない」
「むぅ」
「むぅ…、じゃないよ」

不満そうにソファーに突っ伏したAにちょっとくらい男として見て欲しくて耳元で囁く。

「ねぇ、A…？」
「ん〜？」
「そんなん言われたら俺、本当に送り狼になっちゃうよ？」

「…なるせくんならいいよ」

目を細めて笑ったかと思うと、すぅと寝息を立て始める彼女。

「え…まじで？」

この状況で寝た事と俺なら良いよと言った事実の二重の意味で…。

「はぁー？、もう意味わからんわ」

頭を抱える俺の目の前で健やかな寝息を立てるA。
結局化粧も落とさずに寝落ちた彼女の化粧を落としてスキンケアまでして…
《今日はなにもしない》と宣言した以上、送り狼にはならず彼女をきちんと布団に寝かせた俺を誰か褒めて欲しい。

可愛い顔で眠るAの頬をつつく。
ふにゃりと緩む彼女の表情が愛おしくて憎らしい。

「も〜マジで小悪魔じゃん…」

さっきの発言の真意は明日起きた彼女にちゃんと聞こう。