6匹のネコを拾ったら、若かりし頃の警察学校組とFBIでした。

23缶目 ページ25

「みんな、酒持った？…じゃあ、乾杯！！」

「「『「「「乾杯！！」」」』」」

満開に咲いた桜の木の下で宴を始める合図を声高らかに行う。
皆、手に持った缶ビールをぐびぐび飲む。
今日は天気も良い為、私達以外にも花見を楽しむ人の姿がたくさんある。
賑やかな場所は余り得意ではないな、たまには良いかなと思える。

「これうめぇ！！」

「ホントだ！！」

弁当に舌鼓を打つ。
口にあった様で何よりだ。
零の料理のレベルは普通と言ったところだった。
きっとこれから上達して、あのハムサンドが作られるのだろう。
こうするといいというアドバイスも興味深そうに聞いていた。

『美味しいって、良かったね。零。』

「…あぁ。そうだなA。」

何気なく言った言葉に辺りはシーンとなった。
心なしか驚いた顔をしてこっちを見ているような…。

「えっ、Aちゃん…今、ゼロのこと…。」

「零って呼んだな。」

ええ、呼びましたとも

「ふむ、A。俺のことも名前で呼んでくれ。」

『？…えっと、秀一？』

秀一は嬉しそうに笑って、あぁと言った。
その後からは俺も！俺も！となりみんなのことを名前で呼ぶ事になった。伊達さんだけ航君で後は呼び捨てだ。
みんなとの距離がグッと近付いたようだった。
嬉しさ半分、別れた時の寂しさに半分で少し複雑な気持ちになった。

『ちょっと、御手洗いに行ってくる。』

いってらっしゃいと元気な声で送り出される。
みんな大分出来上がっているようでへらへらしている。
御手洗いと言うのは嘘でその辺りをぶらぶらと歩く。
先程の複雑な気持ちを落ち着ける為に。

『いつ別れるかも分からないのに、今から不安になるなんて…それに、元の世界にある事が普通なんだ、今の状況が可笑しいだけ。漫画の中で会えるから大丈夫。あっ、でも警察学校組はほとんどなくなってるんだった…。』

結局、同じ事がぐるぐる頭を巡り思考が纏まることはなかった。


遠くにみんなの姿が見える。
楽しそうに笑っている。
この人達は今、この瞬間を生きているんだ…。
その瞬間を共に共有出来るのはかなりすごい事なのだと気づいた。
見えない不安に怯えるより、今を楽しむ方が得策だろう。
そう結論付けると、みんなの所まで走って行った。



『ただいま！ちょっと道に迷っちゃった！』

今を楽しむ為に。

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