【○○○&男主】親戚のお兄さん【田中龍之介】 (ページ7)

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カスミソウ＃６ページ7

ボールの弾む音とシューズの音。
オレとあまり変わらない身長なのに、高く、高く飛んだ。その姿は鳥みたいのようだった。体育館の宙を自由に飛ぶ鳥。
「…ぅわ…」
思わず声が漏れた。その綺麗すぎる姿は一周回って怖くもあって。黒い髪の毛がふわっと遊ぶように舞っている。
パシンッとボールを叩いた音は軽くて、それでもそのボールは激しく地面に叩きつけられた。
「久し振りすぎて覚えてないや。…ごめんね下手くそで。」
「…」
開いた口が閉じない。これが下手くそだったらオレはまだまだじゃないか。
「え、えっと…日向くん？」
大丈夫？と女子みたいな顔で聞いてきた。でもあのボールを打った先輩の顔は、テレビでしか見たことはないけれど野生の動物…ライオンみたいな感じだった。
「すっげぇー！今の、どうやったんですか！？」
影山も一緒に先輩に聞きたそうにしているけど、先輩は苦笑いをするだけで答えてはくれなかった。
それ以上入ってくるなと線を引かれているような。オレと先輩との温度の差が感じられてしまった。
「僕は下手くそだよ。日向くんの方がよっぽどうまいと思う。」
「え…」
どういう事だろう。オレより上手いのに、下手くそ？
そんなはず無いのに。
先輩は泣きそうな顔でボールを持って片付け始めた。
「…さ。帰るよ。片付けて。」
「…はい。」
オレと影山は散らばったボールを戻していたら、先輩が天井を見上げていたのを見た。
宝石みたいな綺麗な緑色の目が泣きそうになっていた。