【○○○&男主】親戚のお兄さん【田中龍之介】 (ページ40)

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ジギタリス＃３９ページ40

その数歩を進めずにいると、兄さんはまたポロリと花をこぼして俺に背を向けて奥へ向かおうとふらりと立ち上がっていた。
「アネモネ…か。」
ポソリと月島が呟いて、その細腕をがっちりつかんだが、兄さんはその月島が掴んだ腕を掴まれていない腕で掴んで、振り払った。
その顔は涙でぐしゃぐしゃになって、いつもの凜とした面影は、かけらも見えなくなっていた。
苦しそうにぜぇぜぇと喘ぎながら花を次々と吐き出している。涙をボロボロ流しているその目元は赤くなっていた。
「A、にいさん…」
そう呼べば兄さんは体を一度だけ強張らせて、目を伏せて涙をこぼして奥に走って行ってしまった。
異様な場所になった、この路地裏は兄さんとよくきていた場所。覚えていたのかと嬉しく思ったが、あの苦しそうな顔でこの場所に縋り付いたのかと思うと切なく感じた。
「ねぇ、田中先輩。」
月島が話しかけてきた。その声はいつものような嫌味はなく、真剣そのものの声色だった。赤ら顔の月島は、メガネのブリッジを乱暴に押し上げて言った。
「アネモネの花言葉知ってます？」
「…しらん。」
そんなの知らなかったって生きていけると思っていたから。そう心のなかで呟くと月島は心底悔しそうな顔で

「あの人は田中先輩のことを半ば諦めてますよ。」

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