カンナ #38 ページ39
「苦しいんだ、行き場がなくて。どうしようもできなくて。」
月島に言われた場所に近づいて行くたびに兄さんの弱々しく泣くような声が聞こえてきた。
初めて聞く声だった。あんな、悲しそうな声は。
フェンスの奥がやっと見えるようになったその時、俺はそこに
「にい、さん…」
綺麗に咲いて、それなのに可哀想なくらい濡れた一面の花に囲まれて泣く兄さんと、白い肌の色を赤くしながらこちらを振り向いた月島の姿だった。
「りゅ、りゅう…」
俺を見つけた濡れたエメラルドグリーンの瞳。その瞬間に兄さんは大粒の涙をボロボロと零して俺の名前を呼んで、その小さい口から
「花?」
ピンク、オレンジの花がポトポトと音もなく落ちて行く。
その花は中心部分に斑点模様がある、どこか不気味な花だった。
「チグリジア…」
月島がそっとその花のものであろう名前を呼んだ。
その名前を言った瞬間、兄さんは口元を慌てて隠そうとしてでも、他の隙間からポロポロと溢れ出る花にまた泣いている。
助けたいのに、助けられない。
どこかフェンスだけじゃない、本当の壁があるような気がして。
俺の視線の先にある二人は、美男子で、俺よりも月島の方が似合っている気がして。
どうにも、あと2、3歩を踏み出せずにいた。
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まひまひ=イヴ - 号泣です!すっごくすっごく泣ける小説ですね!しかも田中先輩の!BLですし!私の好みドストライクです!更新応援してます! (2018年3月5日 1時) (レス) id: 3dd76b4fff (このIDを非表示/違反報告)
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