ユズ #30 ページ31
泣き疲れたのか寝てしまった兄さんを抱きかかえて、帰り道を歩く。
その体はふわりと軽く、折れてしまいそうなくらい細く感じた。
それは多分、兄さんが弱っているからだ。
「…兄さん。」
長いまつげが少しだけ動いたが起きる様子はない。
白い肌に手を添えると、しっとりと吸いつくように手に馴染んだ。
黒髪がサラサラと腕をくすぐるたびに、花の匂いが鼻をかすめるたびに、胸が締め付けられるような感覚になる。
兄さんは俺にそれを「いとおしい」と教えてくれたが、俺はそんなものじゃないと思ってる。
それよりももっと深く、広い。
俺の体からはみ出してしまう位の感情は、そんなちっぽけな言葉一つに収まるわけなんてない。
薄紅色に染まった唇が少し開いて、呼吸音を漏らす。
俺はその唇に吸い寄せられるように
「ん…」
キスをした。
やわらかいその唇を挟むようにキスをすると、兄さんはくすぐったそうに身をよじった。
可愛い。もっと、もっとと求めたくなる自分を押さえつけるようにして、兄さんの唇から自分の唇を離して、抱え直した。
背中がじんわりと熱くなる。
小さい頃、公園付近にあったゴミ捨て場のなかで見つけたいやらしい本を初めて見たときみたいな気持ちになる。
いけないことをしてしまった気分だ。
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まひまひ=イヴ - 号泣です!すっごくすっごく泣ける小説ですね!しかも田中先輩の!BLですし!私の好みドストライクです!更新応援してます! (2018年3月5日 1時) (レス) id: 3dd76b4fff (このIDを非表示/違反報告)
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