ゲッカビジン #19 ページ20
ゴンッ
「あだっ!」
「おいおい…大丈夫か?」
朝練が終わって着替えが終わり、ホームルームも終わったこの時間帯は次の準備をするための10分間だ。
俺はAと一緒にトイレに居る。
Aはどやら腹が痛かったらしく個室に入って今出てこようとしていたのだが…
「最近多いな。ぶつけるの。」
個室のドアに顔をぶつけてしまったらしく鈍い音と、間抜けな声が聞こえた。
「えへへ…」
「えへへじゃねんだよバーカ。」
「いでっ」
ヘラリと誤魔化すように笑ったAのぶつけて赤くなったデコをピンッと弾く。
しゃがみこんでデコを両手で押さえて呻いている。その細っこい手の甲にホクロがある。左手の薬指と、親指に右手の人差し指。
その指に、リングをはめてやりたいと何度思ったことか。何度、その柔肌にキスをしてやりたいと思ったのだろうか。その数を数えていれば、日が暮れるどころか年を越してしまうだろう。
「ほれ。授業遅れんぞ。」
「…だいち。」
急に弱々しく、呂律が回らなくなったような口振り。
それは、いつものものが来た証だった。
「ぐ…ぅ…」
「ゆっくり息吐けよ。…そう、偉いな。」
Aの細くて、軽い身体を抱え上げて抱きしめる。人肌に触れていると安心するそうだ。
俺にとっては拷問に近いがな。
花を吐かない代わりに副作用が苦しい薬を飲まなければ抑えられないそれ。
「…」
歯を合わせて食いしばれば、歯はギリ…と嫌な音を立てた。
もしも、相手が田中じゃなくて俺だったら。こんな苦しい思いをさせずに済んだのかもしれないのに。
そんな虚しい考えを持ちながら俺は、抱きしめたAの髪に静かにキスをした。
23人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まひまひ=イヴ - 号泣です!すっごくすっごく泣ける小説ですね!しかも田中先輩の!BLですし!私の好みドストライクです!更新応援してます! (2018年3月5日 1時) (レス) id: 3dd76b4fff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ