バーボン ページ30
「なぁ。」
唐突に尋ねられる。
「なんでしょう。」
僕の短い髪を、長い指で弄りながら、微笑まれた。
その薄い唇は、僕にお願いを言った。
今なら受けられるお願い。
「あのよ、一回でいいから…」
耳元で囁かれたお願い事を僕はこの快く受けた。
「勿論。貴方が望むというのなら。」
懐かしい感覚。
指先が覚えている感触。
そこらにある椅子に座って準備をする。
リードを口に咥えていると、歳三さんは興味深そうに見つめてくる。
久しぶりに触れるから、キィが悪くなっていないかとか、コルクが剥がれていないかとか、心配したのだが、そんな事は無かったようだ。
動きが鈍いキィにオイルを注して、マッピにリードをつける。
「…お前が人気の理由、分かった気がする。」
そういった歳三さん。
そんな事はないと思うんだけどなあ。
組んでいた足を戻して、冷たい楽器に息を軽く息を入れる。
あぁ、懐かしいな。本当に。あれから、何年触れていないのだろう。
「…いきます。」
「おう。」
謎の緊張が走る中で、唇に咥えたマッピを咥え直す。
軽く音出しをしてから曲を吹くと、あの頃のことが思いだされた。
甘くて、切なくて。
思い出したくない過去を噛み締めるように吹く。
目の前の愛おしい人は、僕の音を聴いてうっとりしているようで、心配そうに瞳を揺らめかせている。
どうか、心配しないで。僕は大丈夫。
そう言うように吹き込むと、僕の中の何かが解けていくよう気がした。
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伊達狐@活動停止(プロフ) - 燐さん» ご指摘ありがとうございます。変換ミスのようですね…（汗）申し訳ありません。直させていただきます！ (2018年2月17日 19時) (
レス) id: d530d2d8e8 (このIDを非表示/違反報告)
燐 - 中村祐一じゃなくて中村悠一さんじゃないですか？ (2018年2月16日 18時) (レス) id: 0efc3643a8 (このIDを非表示/違反報告)
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