キール ページ20
散々泣き、疲れてしまったAはそのまま、俺の腕の中で眠ってしまった。
こうして見ると割と幼い顔をているとか、細ぇなとか、殴られた頰が腫れているなとか。
今のように、余裕があるからこそ気づけることがある。
涙の筋を指先で拭うと
ヴー、ヴー
携帯のバイブの振動音が聴こえる。
…俺のだ。
少し離れたところに置いてある携帯。
届くか…?
精一杯手を伸ばし取る。
左之助からだ。
「もしもし。」
『土方さんか?今どこにいる。』
どこか焦った声色。
いつもは余裕たっぷりの声色。
どうしたのだろう。
心が勝手に早くなる。
「…Aの家だ。風邪ひいたみたいでな。…看病してた。」
『そうか。今出られそうか?』
声色がひっくり返らないように、落ち着いた声でいう。
すると、左之助も幾らか落ち着いたようだった。
「どうかしたのか?」
そう問いかけると、深呼吸をしているようで左之助は深い溜息のような息がマイク越しから聞こえた。
『…Aのバーで騒ぎを起こした男がいるらしいじゃねぇか。』
あぁ、あの男か。
Aの精神を揺さぶる男。
此方からは手を出していない。
むしろこっちが手を出された方だ。
「そいつがどうした。」
『…そいつが、どうやら土方さんの居場所を突き止めたらしくてな。学校側の方に来やがった。』
面倒だ。
はぁ…と息を吐き、眉間を押さえる。
『面倒な奴に手ェ出したな、土方さん。』
「俺が出した訳じゃねぇよ…正当防衛だ。」
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伊達狐@活動停止(プロフ) - 燐さん» ご指摘ありがとうございます。変換ミスのようですね…(汗)申し訳ありません。直させていただきます! (2018年2月17日 19時) (レス) id: d530d2d8e8 (このIDを非表示/違反報告)
燐 - 中村祐一じゃなくて中村悠一さんじゃないですか? (2018年2月16日 18時) (レス) id: 0efc3643a8 (このIDを非表示/違反報告)
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