science752 ページ44
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戦「…ここから先は俺に言わせて欲しい」
「せっちゃん…?」
聞き覚えのある言葉に喜怒哀楽は胡乱な瞳を彼に向けた
それと同時に胸の底に凍えるような恐怖が蟠る
次に出る戦兎の言葉が拒絶の意であったらどうしようと考えてしまって、それでも逃げ出さない様に布団を握り締める
恐怖と格闘する自分に対し、此方を然りと見据える彼は一拍を置くとゆっくりと言葉を紡ぎ始めた
戦「狡いんだよ、ゆーちゃんは」
「っ……」
戦「俺や万丈達の事ばかり考えて、自分自身の事は二の次で、呪われていた時だって…俺達のために血を吐いてまで一緒に戦ってくれてたんだろ…?ゆーちゃんの事だから自分の問題に俺達を巻き込ませねぇように一人で境怪や十魔遥姫と戦って、ずっと一人で苦しんで…………それが狡いんだよ…そんなゆーちゃんを気付けなかった俺が…俺は許せない…!」
考えていた事とは裏腹の言葉に喜怒哀楽は瞳を見開かせた
帰ってきた言葉は拒絶ではなく戦兎が戦兎自身に対した憤り
気付けられなかった後悔と無力差を感じているその声音に、喜怒哀楽を責める様なものは一切感じられない
ああだからこそ、無意識のうちに口が開いてしまったのだ
「なんで…こんな俺を助けてくれたんだよ…」
戦「当たり前だろ。ゆーちゃんは俺の相棒で、大切な仲間だ。それに…"ラーメンをまだ奢ってねぇだろ?"」
「!…まだ覚えてたのかよその約束…」
戦「ゆーちゃんを宥めるのに必死だったんだから仕方ないでしょうよ!……あの時はゆーちゃんと知らなくて…あんな事を言って、ごめん」
あの時___嗚呼、一年も経っていないのにあの時の事が随分と昔に思えてしまうのは何故だろう
喜怒哀楽が暗殺者でルターである事なんて知らなくて至極当然だったのに。それでも、龍我と言う相棒が居たとしても喜怒哀楽を変わらず「相棒」と呼んでくれるそれだけで、どこか救われた様な気がして
「…なぁ、せっちゃん。皆」
故に今度こそ、問い掛けたい
例え臆病な嘘吐き上等種であってもこれだけは本当だから
「こんな俺でも…これからもお前らと…一緒に居て…いいか…?」
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作者名:黒神白堊 | 作成日時:2018年10月22日 17時