science746 ページ38
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「っ……」
ワントーン低い声音に、喜怒哀楽は言葉が詰まった
いくつか死地を乗り越えた身だと言うのにその言葉だけで体が強張る
水面の様に落ち着きのある銀の瞳に存在する怒りの感情を、本能的に感じて萎縮してしまう
神の怒りとはまさにこの事か
種族としての圧倒的優位は、獲物に目を付けた狼の威圧にも等しいのだ。畏怖で言葉が出ずにいると天使は一つ溜息をついて、こう告げる
ア「アレイスターは自己を認められなかった自信のなさによって傲慢と虚飾を生んだ独り善がり野郎だが…君はそれよりも質が悪いと言うか日本人独特とも言うべきか……ようは考え過ぎの独り善がり野郎だ。"単純"なパズルの筈なのに要らないピースが沢山有り余り過ぎて一向に完成出来ない様なね?」
「単純…だと…?」
ア「ああそうだよ。君はただ真っ直ぐな道を歩いていけばゴールに着く道でそれを信じられずに進めないだけの子羊だ。あのアレイスターだって血泥にまみれながら進んだと言うのに情けない事この上ないね。__自分は悪だから死んで当然だって?ふざけんな。「命」は王だろうが罪人だろうがなんだろうが関係無く平等の上であり、死んで良い命なんてもの一つもあるものか!世の人間達の「死んで良い命」というやつは悪と、有無も言わさず真実も知らず決め付けられた者を群衆がその暴走した正義心で成されるクソッタレな制裁によるものだ!」
そんなものに正義は存在しない
人は人を裁くが、はてそこに完全な平等性を持てるだろうか?裁く側の人間にだって心はあり悪を許さない正義心がある。裁かれる人間が、悪と見なされ死ぬであろう罪人が本当にどうであるかなんて解らないのに、全てを決め付けて「悪」と見なしてはいけないのに
…なら、喜怒哀楽はどうすれば良い?
死んで当然の命では無いとしたって今までやって来た事が無くなる訳じゃない
罪は確かにここにある。全て喜怒哀楽の記憶の中にある
「それでも俺は…」
ア「そう言えば…一つ言い忘れていた。君を助けたいと今一番誰よりも奮闘しているのは誰だと思う?」
「…?」
その問いに、喜怒哀楽は怪訝な瞳を天使に向けた
自分を助けようとどんな人間より必死になるのは身内の熾織か紫苑くらいだろう
そんな当たり前の答えをどうして________
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ア「"桐生戦兎"だよ」
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作者名:黒神白堊 | 作成日時:2018年10月22日 17時