science730(〃side) ページ22
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土御門紫苑は姓の通り、かの大陰陽師安倍晴明の後裔だ
しかも分家ではなく代々当主を担ってきた本家の血筋を持つ
そして紫苑は亡き
祖父はとても優しくしてくれる。だが、子供だ。普通に考えれば親に甘えたい盛りの年頃だ
孤独によって徐々に心をすり減らしていた五つの時…正月に自分初めて神浄家に訪れた
その頃になると高校生の喜怒哀楽は既に神浄家に住んでいた。喜怒哀楽は熾織と共に快く出迎えてくれて、本当の妹のように紫苑を可愛がってくれた。兄も姉も居なかった自分には何もかもが初めてで、擽ったくて、暖かくて……いつの間にか、孤独はとっくのとうに消えていたのだ
…喜怒哀楽も熾織も大好きだ
思春期真っ盛りな自分はきっと、口に出して言う事は無いけれど
だからせめて、こんな世界だから二人の力になれれば幸いで
大切だから、換えの効かない大事な人達だから守りたくて
___この命に代えたとしても…失いたくないんだ
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「う…あ、ああ………」
景色が滲む
頬に滑り落ちる雫は重力に順じて無機質なコンクリートの床に砕けた
込み上げる感情を抑制出来ず自然と嗚咽を漏らし、涙が止めどなく溢れてしまう。手で自らの顔を覆い隠すのが自分に残された唯一の抵抗だった
敵の言葉が、酷く心に突き刺さった
確かにそうかもしれない
術師の殆どが戦兎達に手を回せない状況で唯一自分が出来る最善は戦兎達に力を貸す事だろうそう思った
だが、実際は違う。喜怒哀楽の代わりを努めようと思ったのだ。…だって、そうでもしないときっと紫苑は一縷の希望も抱けなくなる。喜怒哀楽が敵の手に落ちた事実に、絶望しかないと一瞬でも思い込んでしまったから
龍「紫苑…」
一「クソ…なんでこう言う時
嗚呼…誰か、助けてくれ
深淵の大悪魔に捕らわれた哀しき男を
失いたくはない、大切な人を
誰か……誰か……!
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「喜怒哀楽兄を…助けて……!戦兎…ッ!!」
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作者名:黒神白堊 | 作成日時:2018年10月22日 17時