検索窓
今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:10,338 hit

science730(〃side) ページ22

.

土御門紫苑は姓の通り、かの大陰陽師安倍晴明の後裔だ


しかも分家ではなく代々当主を担ってきた本家の血筋を持つ


そして紫苑は亡き前当主(父親)十二天将貴人(母親)の一人娘であり半神だった。一族からの期待も大きく、何とか応えてきたがその中で孤独感を抱え無かったと言うなら嘘になる


祖父はとても優しくしてくれる。だが、子供だ。普通に考えれば親に甘えたい盛りの年頃だ




孤独によって徐々に心をすり減らしていた五つの時…正月に自分初めて神浄家に訪れた

その頃になると高校生の喜怒哀楽は既に神浄家に住んでいた。喜怒哀楽は熾織と共に快く出迎えてくれて、本当の妹のように紫苑を可愛がってくれた。兄も姉も居なかった自分には何もかもが初めてで、擽ったくて、暖かくて……いつの間にか、孤独はとっくのとうに消えていたのだ





…喜怒哀楽も熾織も大好きだ


思春期真っ盛りな自分はきっと、口に出して言う事は無いけれど


だからせめて、こんな世界だから二人の力になれれば幸いで


大切だから、換えの効かない大事な人達だから守りたくて




___この命に代えたとしても…失いたくないんだ





.





「う…あ、ああ………」





景色が滲む
頬に滑り落ちる雫は重力に順じて無機質なコンクリートの床に砕けた

込み上げる感情を抑制出来ず自然と嗚咽を漏らし、涙が止めどなく溢れてしまう。手で自らの顔を覆い隠すのが自分に残された唯一の抵抗だった




敵の言葉が、酷く心に突き刺さった

確かにそうかもしれない

術師の殆どが戦兎達に手を回せない状況で唯一自分が出来る最善は戦兎達に力を貸す事だろうそう思った


だが、実際は違う。喜怒哀楽の代わりを努めようと思ったのだ。…だって、そうでもしないときっと紫苑は一縷の希望も抱けなくなる。喜怒哀楽が敵の手に落ちた事実に、絶望しかないと一瞬でも思い込んでしまったから





龍「紫苑…」


一「クソ…なんでこう言う時喜怒哀楽(アイツ)がいねぇんだよ……!」






嗚呼…誰か、助けてくれ



深淵の大悪魔に捕らわれた哀しき男を



失いたくはない、大切な人を



誰か……誰か……!






.







「喜怒哀楽兄を…助けて……!戦兎…ッ!!」



.

science731(戦兎side)→←science729(紫苑side)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.1/10 (15 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
17人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:黒神白堊 | 作成日時:2018年10月22日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。