science729(紫苑side) ページ21
.
「戦兎!!」
エボルトと共に消えた戦兎が再び戻って来たのはそう長くはない時間だった
ワープの衝撃でダメージを負った戦兎が膝から崩れ落ちるのを目視で確認すると、紫苑は目を瞠る
戦「う……」
「戦兎………ッ!」
駆け寄って彼からエボルトを守る様に紫苑は戦兎の前へと躍り出た。ライダーでも無い術師が生身で攻撃を受けたらどうなるのか、光騎で見たから既にそれは知っている。でも自分は術師なのだ。戦兎は神浄喜怒哀楽が守りたいとそう望んだヒーローなのだ
真紅の弓矢を構え、いつでも射る準備をした直後…紫苑は敵の変質した姿に目を見開かせてゴクリと息を飲んだ
人類悪___エボルトの肘から下が変容し、鉤爪が備わったものへと変わる。長く鋭いクロウだ。虎やライオンとは比べ物にならない
エ「惑星を吸収してまた一段と強くなった」
「させない…!!」
有らん限りの霊気を保った弓矢が炎を纏い、エボルト目掛けて瞬足が如き速さで放たれる
紫苑とエボルトの位置は殆どゼロ距離に近い
確実に当たる。避けられる筈が______
エ「ふん、"遅いな"」
「掴んだ!?そん___ぐ…!?」
エ「邪魔だ術師」
瞬間、腹に容赦のない衝撃が走った
エボルトがそのクロウで紫苑の腹を殴ったのだ
そのまま後ろへと吹っ飛ばされビルの壁に叩き付けられる
背中のみならず頭まで打った為か視界がグラグラする。視界の焦点が合わず吐き気が競り上がった
朱『紫苑!』
「ッ…だい…じょう…ぶ…」
エ「喜怒哀楽の代わりになんとかしようとでも思ったのか?ハハ、憐れな奴だ」
「ッッ!!」
戦「ぐがっ!!」
そう言い捨てた言葉に反論しようとした直後、戦兎がエボルトに体を掴まれクロウような手ではたかれる。その動作だけで彼は勢い良くブッ飛ばされ向こうのビルを突っ切り、更には追い討ちをかけるようなエボルトの攻撃をもろに食らう
恐らく戦兎は下に叩き付けられた
そして、エボルトはその後を追って行ったのか
.
「……、」
.
一瞬の事で呆然としていた紫苑は___何かが堰を切った様に、瞳から熱いものが流れた
.
science730(〃side)→←science728(戦兎side)
17人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:黒神白堊 | 作成日時:2018年10月22日 17時