science721(鏡怪side) ページ13
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一方で、鏡怪はあと少しで事切れるであろう母をボウっと眺めていた。白髪赤眼はつまりコロンゾンが母の中に入っていたからか、少なくとも人ならず者を身に宿すと人間は体に異変が現れるのだろう。戦兎がエボルトに乗っ取られた時がいい例だ
呼吸が浅く、そして異常な程早い
焦点が合わないのか虚ろに天井を眺めている。いや、視力も聴力も失ったのかもしれない
何となくその手を触ってみれば死人の様に酷く冷たかった
(死人…)
鈴野遥姫の時は10年前に終わったのだ
この魔女は死人、自身の使い魔に利用され仮初めの命を与えられていたに過ぎない
そしてその命も最早終わる
だからだろうか
ふと、自分は側にいた父親に問い掛けた
「…お父さん」
光「何だい?」
「お父さんは…お母さんの事、許せます…?」
光「………全ては…無理かな。彼女がした事は大きな罪だ、そう簡単に許される事じゃない。でも…境怪の事をずっと引きずっていた彼女を気付けなかったのは私のせいだ」
「それに」と光は言葉を繋げて、ほんの少し柔らかい笑顔でこう言った
ああそれは____恋する青年にも似た笑顔で
光「私は今でも彼女が好きなんだ。心の底から愛している。きっとこれからもずっと愛し続けるんだと思うよ」
「……!」
あまりにも父親らしい答えに娘である自分は瞠目する他なかった
この男は魔女を愛し、魔女からも愛された
紛う事なき相思相愛だったのだ。だから鏡怪だって境怪だって生まれたんだ
母親のやった事はこれから先未来永劫許されない罪だ
自身の悪魔に利用されてしまう程に狡猾だった
アイワスが言った通り鏡怪は未だ人の域に留まっているのだろう
でも、それでも
「メフィスト、"お母さんを殺しましょう"」
メ「あ、主?」
「悪魔に殺されて終わる何て身内として恥ずかしいんです。私だって魔女です、生半可な覚悟と言われて黙っていられる訳無いんですよ」
ア「!…はは、いい傾きだ
では諸君、決して瞬きをしてはいけない。未だ成熟未途中の魔女が成長する瞬間が来たよ」
全ての常識を覆し破壊しかねない叡智の聖守護天使が嬉々として笑うのに対して、鏡怪は息絶える事を待つ母の姿を見つめた
悪魔に殺されて終わるなんて絶対にダメだ
きっとそれは大悪魔の思惑の中
思い通りにさせるものか
ならせめて______自分の手で死んで行け
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作者名:黒神白堊 | 作成日時:2018年10月22日 17時