science263 ページ42
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「っ…うぅ……クソッ…」
戦兎達から完全に死角になっている通路の壁に寄りかかった喜怒哀楽は、そのままズルズルと崩れ落ちた
全身からは脂汗が吹き出て、酷く呼吸が荒い
心臓がバクバクと鳴っているのを耳許で感じながら胸元を握り締める
晒を巻かれている胸を見るまでも無い
脈打つ様な痛みに苦悶の顔を浮かべる自分は
苛つきにも似たトーンで呟いた
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「なん…で、急に…いっ……」
…パンドラタワーが出来て以来
ずっと胸部を中心に蝕む様な痛みが走っている
苦しいと言うか、痛いと言うか
締め付けられる様な痛みが治まらない
これがどういう原因で起こっているのかなんて…既に自分は知っている
それを必死に隠して騙し騙しやっていたのだ
ポーカーフェイスなら仕事柄慣れているからこそ
痛みに苦しんでいる素振り何て一切見せず平生を保っていられた
戦兎にも皆にも
だって知られてしまえば戦兎は心配するだろう
戦いに出るなと言われるに決まっている
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(それが嫌だから俺は……)
__それは____お前自身を蝕む"呪い"だ__
あの時、ミシェルが言った事を思い出した
天才魔術師が言うにこの呪いは随分前からあったものらしい
子供の頃くらいから掛けられたと仮定すれば
ここまで酷くなるのも納得出来るとか無いとか
放っておいたらどうなってしまうか…正直、今は考えたくもない
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「せめて持って…くんねぇ…かな…」
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せめて…この戦争が終わるまでは
もしくは全部の事が終わってからでも良い、大きな事は望まない
元より暗殺者をやっていれば死と隣り合わせだ
死神の形をした人間の隣に死神がいるだけの事
いつ死んでも良い覚悟ぐらいとうに出来てる
泣き言にも近い弱音を溢して痛み故にか
視界が狭まりつつあるその時__
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??「これ、気絶するではないぞ神浄の研究員
春深くなる季節とは言え廊下で寝ては風邪を引いてしまう」
「所長……?」
節「いかにもそなたの所長だが?
ふむ……肩を貸そう、適当な部屋で休むが良い」
何処からともなく現れた節季に驚く暇もなく
喜怒哀楽は肩を回され、彼に支えられる様な形で
部屋に案内されたのだった
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桃 - 面白いです!!頑張ってください!! (2018年7月19日 21時) (レス) id: a20db0fe37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒神白堊 | 作成日時:2018年3月31日 17時