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ごめん ページ23

「……ッ」

あたしは即座に抜刀して刀を構える。

「切国、早く逃げて」

切国を庇う様に前に立ちながら言う。

「……Aか…?」

って、気付いてなかったんかい!

「そういえばA、ずいぶん可愛らしい服を着ているね」

身体中を這う様な目線に吐き気が込み上げてくる。

「でも君は、こっちの方が似合うんじゃないかな?」

ばさっ、と彼が袖を一振りすると黒い霧があたしを包む。

すると

あたしの服はあの時の服装に戻っていて。

大きく肩や足を露出した赤と黒の着物。

髪を結い上げるのは黄金色の豪華な簪。

そして、手にはあの枷がはめられていた。

「……っ!!」

やだ…!!

こんな穢れた姿切国に見られたくない!!

思わずしゃがみこむと彼はあたしのすぐ前に立ち、手を差し出した。

「さぁ、俺と一緒に来てくれるよね?」

「……」

あたしは無言で睨み付ける。

「まさか、篠ノ井みたいに抵抗したりしないよな?」

ぐっ、と顎を掴まれても睨み付けるあたし。

その膠着状態が暫く続いて。

「――分かった」

彼がすっ、と身を引くと。

ドスッ

――小さな小刀が、切国に刺さった。

「切国ッ!?」

ぐらり。

桜に混じって倒れる切国。

「彼には速効性のある猛毒を塗ったナイフを投げた。うーん。命持って五分ぐらいかな?」

キッ、と見ると彼はあたしの目の前に液体の満ちた小瓶を置く。

「Aが来るなら解毒剤を渡すよ?」

どうする?と一つしかない選択肢を迫る彼にあたしは答えた。

「……抵抗しません。貴方の元に戻ります。だから――ッ!」

彼はふぅ、とため息を吐くとあたしの前に小瓶を渡した。

あたしは切国の側により、なんとか蓋を開ける。

「……A…っ…?」

苦しげに名前を呼んでくれる彼に微笑みかけた。

「ごめん。巻き込んで、ごめんなさい…っ!」

涙が溢れた。

ほんの一時だけでも触れられた『幸せ』は温かくて。

その『幸せ』は、私が居れば成立しないのかもしれない。

「あのね、切国、かくれんぼしてくれたり、運んだりしてくれてありがと」

「…よく、分からな…いが…行く、な…!」

薬を口に含み、口移しで飲ませる。

「悲しい、とかっ…痛い、とかしか知らなかった、から…っ。幸せを…ありがと…!!」

ぎゅっ、と手を握り告げる。

「あたし、切国が好きだよ……」

そして、そっと手を離し背を向ける。

「A――ッ!!」

聞こえた声には応えられない。

ゆっくりと呪術で意識が深い海の中に沈んでいく。

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設定タグ:刀剣乱舞 , 山姥切国広 , 刀剣女士   
作品ジャンル:恋愛
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陰浦 - いつも見ています!まんばかっこいいですね〜。更新頑張ってくださいね! (2017年3月5日 7時) (レス) id: 15f125b34f (このIDを非表示/違反報告)
狐火@きつねうどん(プロフ) - 影星(白銀竜)さん» ありがとうございます。更新&返信、非常に遅れてすみませんっ!もうちょっとで完結なので、飽きない限り応援いただけたら嬉しいです! (2016年3月13日 23時) (レス) id: c8a407e76f (このIDを非表示/違反報告)
影星(白銀竜)(プロフ) - 続き凄く気になります!更新頑張ってください♪ (2016年1月8日 2時) (レス) id: 680da25cf6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐火 | 作者ホームページ:   
作成日時:2015年7月31日 11時

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